Which is right Moon's Guardian?

□月と目覚めと仮の姿
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桃矢も合流してからはとても早く作業が終わってしまった。
二日か三日はかかると思っていたのに。

「ありがとう。桃矢、雪兎」
「どういたしまして」
「疲れてない?」
「大丈夫だ」

綺麗に片付いた部屋を見渡して、桃矢と雪兎が準備を始めた。

「ほれ、行くぞ」
「え」
「妹にももう一人来るって言っちまったし。アイツ、今日の当番だから」
「え、さくらちゃんが当番なの?」

どうやら桃矢の妹はさくらというそうだ。雪兎は笑顔で「さくらちゃんのご飯はとってもおいしいんだよ」と教えてくれた。

「……本当に、いいのか?」
「気にすんなって。お前から悪い気配はしないから」

気配。首を傾げたが、すぐに何の事だか分かった。
桃矢は「力」がある。「魔力」が。それで気配が分かるんだ。

「見えるんだな」
「ああ、まあな」

その時の俺は、「霊力」ではなく「魔力」であることに違和感を抱かなかった。
当然のように「魔力」があるのだと。

「じゃあ、行こうか」
「ありがとう。桃矢、雪兎」

二人に礼を言って、靴に履き替える。綺麗になった部屋をもう一度見て、鍵を閉めた。

「しかし、ゆきとシュウ。何か似てるよな」
「え?そう?」
「雪兎の方が優しそうに見えるがな。俺は目つきがキツイと言われた事がある」

こんな話をしながら、桃矢の家に向かう。

「ただいま」
「お帰りなさい。月城くんと……?」

優しそうな眼鏡をかけた男性がいた。誰だろうと首を傾げると雪兎が隣から「とーやのお父さんだよ」と教えてくれた。

「今日引っ越してきた月影シュウと言います」
「初めまして、木之本藤隆です。よろしくお願いしますね」

優しく笑う、その顔を俺は知っているような気がした。誰かに似ている。
その誰かが、誰なのかは分からないけれど。

「偶然道で会ったんだ。急に連れて来てごめん」
「いいえ。桃矢くんのお友達なら大歓迎ですよ。さくらさんも晩御飯を作って待ってましたし」

その言葉に、いそいそと桃矢はリビングへと向かっていく。雪兎も笑顔を浮かべて上がっていった。

「何してんだ?来いよ」

桃矢が俺に向かって言う。その時、初めて自分も上がっていいのかと思った。
リビングにはローテーブルとソファがあった。向こうのテーブルには椅子が四つあった。俺は座れないな、と思っていると

「お兄ちゃん、今日はお好み焼きだから向こう持ってって!」

元気のいい声が聞こえて、ローテーブルの上にホットプレートが置かれた。
雪兎が「座ろうか」と俺の手を引いて座らせた。

「さくらちゃんの手作り?」
「はいっ!」
「怪獣がはりきりすぎて妙なモン作るなよ」
「さくら怪獣じゃないもん!」

桃矢の言っていた妹を見て、俺は心の奥が痛んだ気がした。可愛くて、元気な子だと思うし何も悲しく思う必要はないのに。

「ほえ?お兄ちゃん、お友達?」
「ああ。シュウ」
「あ、ああ。月影シュウという。その、今日引っ越してきたばかりなんだ」
「わたし、木之本桜です。よろしくお願いしますっ!」

桜と名乗った少女は、俺に向かってとてもきれいな笑顔を浮かべた。
驚いた俺は目を見開いていた。

「シュウ?さくら?」

固まっていたのは俺だけじゃなかったらしい。桜も慌てていた。

「すっ、すみません!じろじろと見ちゃって」
「い、いや。俺も悪かった」
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