Which is right Moon's Guardian?

□月と仮の姿
1ページ/4ページ

星條高校に転入して、慣れてきた頃。
俺は暫く雪兎と行動を共にしていた。今朝もチャイムが鳴る。

「シュウ、起きてる?」
「起きてる。準備は終わってる、行こう」
「そうだね」

そう言いあって、家を出ようとした時だった。
不意に耳の奥で聞こえた声があった。

「クロウカードの気配がする」と。

振り返ったが、誰もいない。雪兎が不思議そうに俺の名を呼んだ。

「どうしたの?」
「いや……」

気のせいかと思って無視していたが、授業中にも声が聞こえてきた。
さっきは子供の声だったが、今度は低い男性の声だった。

「ユエ」

そう呼ぶ誰かの声が懐かしく感じる。優しく、「俺」を呼んでいるのだと分かる。
分かるけれど、俺の名前ではない。俺は月影シュウであって、ユエなんて名前ではない。

どうして、何故。考え出したらキリが無くて、授業中ずっと俺を呼ぶ声と、考え事でボーっと過ごしていた。

「シュウ、どうしたの?」

雪兎が声を掛けて来て、驚いた。いきなり声を掛けないでくれ、びっくりしたと言うと「ごめんね」と苦笑した後「もうお昼休みだよ」と教えてくれた。

そんな長い時間悩んでいたのか、と自分に呆れる。

「とーやは先に行ってて。おまんじゅう買ってくるね。行こう、シュウ」
「あ、ああ」

雪兎に手を引かれて購買へ向かう。雪兎はさっさと売り場に向かってまんじゅうを見ている。
その間に、何だか嫌な予感がした。

「雪兎、何だか嫌な予感がする」
「え?」
「先に行ってる。後から来てくれ」

そう言って、返事も聞かずに俺は予感の先に向かった。
友枝小学校と星條高校が隣り合っているフェンスの所に桃矢がいた。
その後ろには桜とその友達の知世がいて、桃矢の目の前には見慣れない構えをした少年がいた。

「シュウ?」
「……俺、は……」

この少年を知っている?そう思いながら、彼を見ていた。彼は俺を見て何故だか慌てている様だが……。

「おーい!あったよー!」

雪兎の声がした。桃矢が構えを解く。
勢いよくフェンスを越えた雪兎は、買ってきたまんじゅうを皆に配っていた。
まあ、空気は読めていないがこれでもいいか。
争いは嫌いだし、どうせ記憶の矛盾は何度考えたって答えは出ない。

「あれ?シュウは?」
「お前の目の前にいるぞ、雪兎。気付け」
「ごめんごめん」

六つも買った肉まんを、雪兎が配って最後の一つを少年に渡そうとしたとき。
少年は顔を真っ赤にした。

「……どうした?肉まん、嫌いか?」

俺が聞いた事には答えず、何故か走り去っていった。一目散に。
どうしたんだろうか、と俺と雪兎は顔を見合わせた。

「とりあえず、桜。怪我はないか?」
「だっ、大丈夫です!」

桜の顔も真っ赤だな、風邪か?流行っているのだろうか?
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ