Perfect marionet becomes human.
□第一話
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桜並木の公園前で雪兎と話しながら待っていると、待ち人が来たらしい。
「おっ。ゆきー!玲ー!」
自転車に乗った黒髪の男が来た。雪兎の友達で、高校生の木之本桃矢。色々と言いたい事はあるのだが、妹を私でも分かるほど大事にしている。
いわばシスコンだった。
「おはよう、桃矢。おはよう、さくらちゃん。早起きだね」
雪兎が二人に挨拶をした。桃矢の隣をローラーブレードで走っていた少女が私の友達で木之本桜。
雪兎が大好きな小学四年生で、明るく元気な子だ。
「はい!」
雪兎に声を掛けられて嬉しそうなさくらに微笑ましくなっていると、桃矢が後ろから「5分で朝飯食ったからな」と余計な事を言って足を蹴られていた。
言わなければいいのに。
「おはよう、桃矢。おはよう、さくら」
「おはよう、玲ちゃん!」
「よう」
四人で登校するのだが、さくらは雪兎の隣に居るだけでとても幸せそうだった。
それを見ていると胸が温かくなる。
「玲、またゆきに怒られてたな?額が真っ赤だぞ」
「……ちょっと言葉を間違えただけだ」
桃矢は何だかんだ言いながら、私を心配してくれる。雪兎の小言であってもだ。
「ふーん、どんな?」
「ワガママを言えないと言った事と、食器を洗わせたからすまないって言った事」
「そりゃ玲が悪い」
桃矢にまで言われて、肩をすくめる。悪いのは分かっている。私は人との最低限の関わり方しか知らない。
挨拶をすることとか、人に謝ることとか。
「まだ慣れないんだ」
「焦らなくていいさ。ゆっくり覚えろよ」
「ああ」
私は、桃矢のそういう無理強いしない所が好きだ。
友枝小学校まで来ると、雪兎と桃矢とは別れる。
「またね」
雪兎は私とさくらに飴を放り投げた。ただの飴ではあるが、さくらは好きな人に貰ったからかとても幸せそうだ。
「さくら、あげるよ」
「え?でもでも、玲ちゃんがもらったものだよ!?」
「良いんだ、私よりさくらが持っていた方がいい」
「ありがとう!」
私にとって雪兎はただの世話好きな高校生だ。だが、さくらにとっては一番好きな相手。飴も特に欲しかった訳ではないから、さくらが持っていた方が幸せだろう。
「っと……どう、いたしまして、だったか?」
「うん!合ってるよ!」
少し前に覚えたばかりの言葉を使う。合っていたと聞いてホッとした。私の言葉で笑ってくれるのが嬉しい。
「じゃあ、行くか」
「うん!」
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