Which is right Moon's Guardian?
□月と新たな生活
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それからまた月日が流れて、日差しがまぶしい夏の日。
私達は桜の木の木陰で休んでいた。
「その本、面白いのか?」
「ああ。読んでみるかい?」
「いや、遠慮する」
ケルベロスが嫌そうな顔をして拒否するので、私はおかしくなってケルベロスへ意地悪を言ってみた。
「読んでみればどうだ?お前の短気も治るかもしれん」
「何だと!」
私はクロウに与えられた本を開いて、ケルベロスが文句を言うのを聞いていた。
それに気付いたケルベロスが自分もと読書を始めた。
だが、やはり退屈だったのだろう。数分もすれば眠ってしまった。
「……ケルベロスにはやはり退屈だったか」
「ユエもあまりページが進んでいないな」
「……」
クロウから揶揄(からか)い交じりに言われ、溜息を吐く。お見通し、か。
この本は私には合わない。興味が惹かれる物ではなかった。
「ん……ッ」
「眠いかい?」
「少し」
ウトウトとし始めた私を、クロウは笑った。片手を私の頭において二、三度軽く叩いた。
「眠っていいんだよ」
「話が、したいんだ」
「ん?」
私はウトウトしたまま、クロウを見た。この穏やかな顔が、やはり主人公の父親と生まれ変わりの少年と重なる。
「私は、きっと……お前を探すぞ……」
「それは、未来の話かな?」
「ああ……。覚えておいてくれ」
クロウは笑っていた。意識がぼんやりとしてきた私に、彼はこう言った。
「優樹、貴女は自由に動いていい。不安に怯えながら生きるのはとても辛いだろうから」
私が怯えている事を、クロウはよく知っていた。
本物ではない私を次の主たる「さくら」が受け入れてくれるかどうか分からなかったから。
私が、本物の「月」のように振る舞える自信が無かったから。
次に目が覚めた時、私は真っ先にクロウを探した。何故だかとても不安になった。
「優樹?」
「……クロウ……」
私はクロウの袖を掴んだ。ケルベロスはまだ眠っている。
「まだ、まだ私を置いていかないでくれ。怖い、何の覚悟も出来ていない」
「すぐに置いていくつもりは無いよ」
だから、安心しなさい。幼子にするように私の頭を撫でたクロウは、私にそう笑いかけた。
「私は随分迷ってしまうだろう」
「そうだろうね、お前の事だから」
「お前に話す事だって、随分迷ったんだからな。クロウ」
「知ってるよ」
何か言いたい事がある気がするのに、言葉には出来ない。そんな複雑な思いに囚われていると、ケルベロスの寝言が聞こえた。
「そろそろ部屋に戻ろうか。ケルベロス、起きなさい」
「もう少し寝かせろぉ……」
ケルベロスが居るのなら、少しはこの不安も晴れるだろうか。
呑気に二度寝を決め込もうとするケルベロスに「主に迷惑をかける守護者など、聞いた事も無いな」と意地悪言って、クロウの後を追って部屋に戻った。
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