Which is right Moon's Guardian?

□月と目覚めと仮の姿
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人通りの少ない路地に来て、私は仮の姿へ変わる事にした。
変わった後の「私」は何も覚えていなかった。

「……私……?」

何も思い出せない。「私」は誰だ?
そう口にした瞬間色々と思いだした。
「俺」の名前は「月影シュウ」。イギリス人とのハーフで、友枝町には留学しに来ていたんだった。

「家に戻らねば……」

引越ししたばかりだから、まだほとんど段ボールの中に荷物が入ったままだ。
外には散歩をしに出たんだったか……?

「あれ?彼女!一人?」
「良かったら俺達と遊びに行かない?」

いきなり声を掛けてきた男達に、思わず眉をしかめる。
誰が女だ、俺は男だと言うのに。腹が立った俺は低い声で言った。

「断る」
「まあそう言わずにさあ」
「しつこい」
「その辺にしとけよ」

別の男の声がして、俺は振り向いた。どうやら、俺に声を掛けてきた男たちの知り合いらしい。

「おー、木之本じゃん。月城も!」
「嫌がってんだろ、大概にしとけ」

俺は彼等の会話より、「月城」と呼ばれた男を見ていた。どうしてだか、俺はこの男を知っている気がした。

「大丈夫か?」
「平気だ。……男にナンパされるとは思って無かったが」
「?」
「俺は男だ。普通、男が男にナンパされるとは思わないだろう?」

俺が男だと聞いて、さっきまでしつこかった男たちが慌て始めた。素直に謝って、どこかへ行ってしまった。

「悪かったな、うちの奴らが」
「助かった。俺は月影シュウという。この辺りに最近引っ越してきたんだ」
「この辺りって言うと、ゆきの家に近いな」

ゆき。そう呼ばれた「月城」という男は俺を見て笑った。

「みたいだね。僕は月城雪兎」
「俺は木之本桃矢」
「よろしく。……ところで、その制服は星條高校か?」

二人が頷いた。そこで俺は「星條高校に明日から通う転校生だ」と説明した。
二人は目を見開いて驚いていた。

「俺達と同じクラスだといいな」
「そうだな。初日から友達の心配が無さそうだ」

そう言って笑うと、桃矢が俺に言った。

「うち来るか?妹がいるけど」
「え、いや、いいのか?知り合ったばかりだろう?」
「構わない。どうせゆきも呼ぶつもりだったからな」

桃矢は俺に言ったが、自分の部屋の惨状を思い出して俺は断る事にした。

「すまない、引っ越したばかりで荷物がまだ……」
「手伝うよ。とーや、どうする?」
「俺も後から手伝いに行く。ゆき、先に行っててくれ。その後来いよ」

俺が色々言う前に決まって、雪兎が俺のアパートに来た。片っ端から段ボールを開けていく。

「これどこに置く?」
「ああ、それはあっちに」
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