Which is right Moon's Guardian?
□月と仮の姿
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翌日、桜が雪兎に用があるのだと桃矢に呼ばれたので昼休みは一人で食べるかと思っていると桃矢に俺も引っ張られた。
「何で俺まで」
「桜がシュウにも用があるんだと」
「俺に?」
雪兎の場合は、今日が誕生日なので予想がつく。だが、確かに俺も雪兎と同じく今日が誕生日だが知ってるとは思えない。
「うわっ」
どこからか少年が現れ、桃矢の腕に火をつけた。少年と桃矢が険悪な雰囲気になっていると、桜が現れた。
「雪兎さん!シュウさん!」
「さくらちゃん」
「桜」
昨日は大変だっただろうに、桜は元気に笑っていた。俺に見られたと焦っただろうに。
避けられるくらいはされるかと思っていたのに。
「これ……」
雪兎が桜の持っていた包みを貰った。誕生日プレゼントだろう。
早速中身を見てみると、茶碗と箸だった。雪兎に似合いそうなものだ。
「良い物を選んだな」
俺が桜の頭を撫でると、桜の顔が真っ赤になった。熱でもあるのだろうか?そう思いながらも、その顔が可愛らしくて微笑ましかった。
「あ、あの。シュウさんにはこれ……。お誕生日おめでとうございます」
俺は目を見開いた。知っていた、と言うのか。
驚いたまま受け取ろうとしない俺に、桜が困ったような顔をしていた。
「あの、すみません。急に迷惑でしたよね」
「い、いや。俺に貰えると思っていなかったから。ありがとう」
先程の雪兎と同じく、俺も中身を見てみる。俺の好きそうなシルバーのネックレスだった。
「あの、どんなのがいいか分からなくって。勝手に似合いそうなものを選んだんですけど」
「本当に、驚かされる」
「ほえ?」
俺は桜の頭を撫でて、こっそりとネックレスを着けた。流石に先生に見付かれば没収されるだろうから。
「俺の好きなものだ。ありがとう、桜」
俺が礼を言うと、桜も嬉しそうに笑った。それを見ていた少年が色々と漁り出し、チョコレートを雪兎へ差し出した。
だが、緊張のせいか一言も声を出せずにいる。
「小狼」
「!」
どうしてか、俺はこの少年の名前を知っていた。その疑問も、きっとあの声に聞けば分かるのだろう。
「小狼、雪兎は一言だけでも理解する察しの良い奴だ。一言だけでも言ってみろ」
そうアドバイスすると、小狼は頑張って「た、誕生日」と真っ赤になりながら口にした。
それだけでもやはり雪兎には分かったらしく、「もらっていいの?」と返した。
小狼が頷くと、雪兎が嬉しそうに受け取った。
小狼は次に俺に向き直って、同じようにチョコレートを差し出していた。俺は目を見開いた。
「誕生日、貴方もだと、聞いたから」
つっかえながらも一生懸命伝えようとしてくれる小狼に、俺は目線を合わせて言った。
「ありがとう、小狼。俺まで貰えると思っていなかった」
俺に渡し終えた小狼は一目散に走って行ってしまった。初めて会った時と同じように。
「良かったね、シュウ」
「お前もな、雪兎」
俺達は何だか嬉しくなって二人で笑った。何だか似てるなと笑いあう。
「ハッピーバースデー、シュウ」
「ハッピーバースデー、雪兎」
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