夏目優人帳
□プロローグ
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『お兄ちゃん…っ離れたくないよぉ…!!』
1人の少女が少年に抱きつく。
「しょうがないよ、――。
俺がいない間、1人で頑張れるよな?」
少年は抱きついた少女の肩に手を乗せ、そっと自分から引き離した。
少年の表情は険しく、しかしどこか寂しそうな、悲しそうな顔をしていた。
『っ!
嫌…嫌だよ…っ!!』
堪え切れなかったのか、少女の大きな瞳からは大粒の涙がこぼれた。
「…ごめんな…。
俺だって本当は――と離れたくないんだ…。
あ…じゃあ約束しよう」
『グス…約束…?』
「あぁ…いつか俺たちがもっと大きくなったら絶対俺が――のことを迎えに行く」
『ホント…?』
少女はその言葉を耳にし、俯いていた顔をあげた。
「絶対、だ。
だから、俺が迎えに行くまで頑張れるよな?」
『うん…!!』
「っ……!」
目が覚めた。
ニャンコ先生は俺の布団の上で鼻ちょうちんを膨らましていた。
―懐かしい。
さっきの夢は、今となってはただ1人となってしまった血縁の妹と別れた日の夢だ。
「…亜貴……」
俺も亜貴ももう高校生だ。
そろそろ[約束]を果たさないとな…。
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