夏目優人帳

□プロローグ
1ページ/1ページ

『お兄ちゃん…っ離れたくないよぉ…!!』



1人の少女が少年に抱きつく。



「しょうがないよ、――。

俺がいない間、1人で頑張れるよな?」



少年は抱きついた少女の肩に手を乗せ、そっと自分から引き離した。

少年の表情は険しく、しかしどこか寂しそうな、悲しそうな顔をしていた。



『っ!
 
嫌…嫌だよ…っ!!』



堪え切れなかったのか、少女の大きな瞳からは大粒の涙がこぼれた。



「…ごめんな…。

俺だって本当は――と離れたくないんだ…。

あ…じゃあ約束しよう」

『グス…約束…?』

「あぁ…いつか俺たちがもっと大きくなったら絶対俺が――のことを迎えに行く」

『ホント…?』



少女はその言葉を耳にし、俯いていた顔をあげた。



「絶対、だ。

だから、俺が迎えに行くまで頑張れるよな?」

『うん…!!』






「っ……!」



目が覚めた。

ニャンコ先生は俺の布団の上で鼻ちょうちんを膨らましていた。



―懐かしい。
 
さっきの夢は、今となってはただ1人となってしまった血縁の妹と別れた日の夢だ。



「…亜貴……」



俺も亜貴ももう高校生だ。

そろそろ[約束]を果たさないとな…。



.

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ