未来編
□知己朋友
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相談事があるんだ。
電話口でそう言った僕の耳に、翠の溜め息が聞こえた。
それはどっちかと言えばいやな響きではなく、やれやれと言ったように聞こえた。
一連の事を話したあとの返事も仕方ないなと言う呟きで、どこか笑ってるように聞こえた。
『全く、わざわざ言ってやったのに勝手に解決されたらどうしようかと思っていた。跡継ぎについては考えてあるから鴆連れてこっちにこい。1ヶ月はかかるからそのつもりで支度してこい。』
そう言った翠の言葉に僕と鴆くんは驚くも大人しく従った。
1ヶ月は留守にできるよう支度を整え、僕達は大学の夏休みを使い翠の屋敷を訪れた。
ついたそうそう待ち構えていたかのような翠に、一息つく間もなく連れ出され更に山の奥へ向かった。
「龍神一族には一族の長にしかつかえない秘術がいくつか存在する。その1つに新しい生命を産みだす術がある。」
龍の姿となった翠は背中に乗った僕達にそう説明した。
「そして俺はこの前一族の長の座をついだ。予定より早くなったが認めてもらった。」
「・・・え?おめでとう。」
「・・・おめでとう。」
「ありがとう。」
さらりと告げられた、内容に戸惑いつつも二人で祝いの言葉を言うとあっさりと返された。
「だから、その秘術を使える。もう用意は整てある。後はお前達次第だ。」
「俺達は何をすればいい?」
「それはこれから教える。ついたぞ?」
そう言って翠は地上に降りた。
姿を変えようとする翠の背から降りる。
僕達の目の前に見たこともない不思議な色合いの石が2つ置かれていた。
人の姿となった翠はその石に近づいた。
「この石は生命の石と言って自然界の力を溜め込むことのできる石だ。龍の秘術を使うことでこの石から新しい生命を産みだすことができる。龍の秘術の準備はできている。」
そう言われ指さされた地面には確かに不思議な模様がかかれていた。