短編

□満月の舞台
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今夜は満月だって聞いた。
だから夜の僕は屋敷を抜け出した。
手土産のお酒を持ち昼間に偶然みつけたちょっと面白いものを持って・・。

「全くこんなもの隠してるなんて油断ならねぇじじいだ。」

昼間にいつも使っている筆の先が割れたから、筆を探しに行った。

普段使ってない部屋に入り、買い置きはないかと勝手に探した。

探している途中に珍しいものをみつけた。

一本の横笛だ。

綺麗な細工に一発で上等のものだとわかる。

僕は手拭いを取りだし笛を拭いた。

綺麗な龍笛だった。

ゆっくり口にあて、吹く、澄んだ音が響いた。

結局、筆は見つからなかったけどかわりにいいものを手にいれた。

「あんなとこにしまっといたら宝の持ち腐れだからんな。」

龍笛を片手に夜の僕はご機嫌だった。

ぬらりくらりと歩き目的の屋敷に入る。

嗅ぎなれた薬品の匂いがした。

「よう、鴆月見にきたぜ!」

部屋の障子をあけ、一声かけると中にいた男は驚きこちらをみた。

「リクオ・・来る前には連絡くれっていつも言ってるだろ?何の用意もできねぇじゃねーか。」

聞きあきた不満を言われるが、本気で嫌なわけじゃないのはわかってるから笑いながす。

「ちょっと待ってろ酒用意するから。」

「今日は酒持参してる。」

持ってこなくていいと言うように持っていた酒を見せると鴆くんは苦笑した。

「貸せ。」

縁側に座り自分でついで飲もうとするとお酒を奪われた。

「なんで自分でつぐんだよ。」

そう不満そうに言いつつ、鴆くんは僕にお酒をついだ。

「気が利くな!」

お酒が好きな夜の僕は一気に飲み干した。

(足りない。もっと・・。)

この歳でザルと言うのは色々と不味いと思うが、妖怪の血が欲しているんだから仕方ない。

飲み干した盃を差し出すと、心得ているかのように鴆くんは再びついだ。

そのまま、二杯、三杯と飲み干し四杯目で気づいた。
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