短編

□悪夢の撃退法
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荒れ地の中、夜の姿 の僕は佇む。

見知った人影が目の前にある。

普段なら走りよるその人影を僕は軽く睨んだ。

『死ね!リクオ!』

突きつけれる剣先、血走ったその瞳・・・鴆くんは間違いなく僕を殺そうとしていた。

『もうお前にはついていけねー!死ね!』

何故とは問わなかったのに、鴆くんはそう言った。

鴆くんが僕を裏切った?

信じられないその内容が目の前でおきていた。

躊躇いなく僕に殺意を懐き突っ込んでくる。

僕はそれを難なく交わし、細い背中に祢々切丸を降り下ろした。

『なんで・・・!』

血が吹き出し、崩れ落ちる瞬間に鴆くんが問いかけた。

僕は笑った。

『何故って、鴆が俺を裏切るわけねぇだろ?なのに俺が偽者に騙されたら鴆が可哀想だろ?』

そう僕が言うと、今まで鴆くんの形をしていたものがドロドロと崩れた。

『妖怪なんか嫌いだ!』

背後から聞こえた声に振り返る。

そこに幼いころの僕がいた。

幼い僕は軽蔑しきった瞳を、夜の姿の僕に向けた。

『僕は妖怪なんかじゃない!』

幼い自分にあからさま嫌悪感を向けられ、嫌気がする。

『うるせぇ、消えろ。』

僕は自分自身に祢々切丸を降り下ろした。

人は斬れないはずの刀が、幼い僕を斬った。

幼い僕の姿をしたそれは、先程と同じようにドロドロと崩れた。

『ったく、相変わらず胸くそ悪いもんみせやがって!こりねぇやつだな!貘!』

『やっぱりバレちゃったか!凄いね、今回気合いいれまくったのになんでバレるかな〜。』

ケタケタと笑い声が聞こえ、目の前に僕より少し歳上に見える男性が現れた。

灰色の髪に中華風の服をきた男性は僕に楽しげに笑いかける。

『いくら疲れてるからって俺が二度も同じ手に引っ掛かるわけねぇだろ。』

『本当さすがだね〜。でもこの夢の世界からは逃がさないよ?』

圧倒的な力の差を見せても相手は恐れを見せる様子はなく、ケタケタと笑う。

夢という自分の支配下にいる為の自信か、それともこちらの弱い弱点を知っているとの自信か・・。

『この前はぼくが解いたから夢から出られたけど、今回は解かないよ?君の悪夢は美味だからね。ぼくを満足させてよ。』

自分の作り出した夢の世界に絶対の自信があるのだろう、貘はいくら畏れを飛ばしても焦りもしない。

『あぁ、確かに今回は簡単には破れねぇみてぇだな。だがな、見くびるなよ?奴良組をな!』
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