短編
□一等の写真
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ある秋の日引き出しの中を整理していて一枚の封筒がでてきた。
大切そうに封をされたそれをあける。
中から出てきたのは古い写真だった。
多少色褪せたそれをみる。
(そうか、ここにあったのか・・・。)
幼い頃何度も見つめたそれを懐かしく思いながら見つめる。
そこには1という旗を持った幼いリクオとその隣で笑う自分が映っていた。
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父親に頼まれ、本家に届け物をしに来た俺は首なしに届けものを渡すとリクオを探した。
いつもなら来たことがわかれば出迎えてくれる姿が見えず首を傾げた。
(今日は幼稚園は休みの筈なのに・・・。)
「若は今日は幼稚園の運動会なんですよ?」
どこかに行っているのかと残念に思ったとき首なしに微笑まれる。
「運動会?」
聞いたことのない言葉に聞き返すと、人間の子供達がやる行事だと説明された。
「今からお弁当を届けにいくのですが、良かったら一緒にいかれますか?」
俺はその言葉にすぐ頷いた。
幼稚園についた俺達は手を降ってるリクオに気付きそばにいった。
隣には若菜様もいて、一緒に来た俺に驚いたようだったけどすぐに笑顔を向けてくれた。
「鴆くん!来てくれたんだ!」
嬉しそうに手を掴んでくるリクオに笑い返す。
「ああ、今日は運動会なんだってな?」
さっき説明してもらった内容を思い出しながら尋ねると、嬉しそうに頷かれた。
「うん!ほら僕かけっこ1番なんだよ!」
そう言って服についた金色のリボンを見せられる。
「へぇ、すげぇじゃねぇか!」
今一わからなかったけど、リクオが喜んでいるならいいことなんだろうと俺は褒めた。
「このあと借り物競争にもでるんだよ!」
お弁当のおにぎりを旨そうに頬張りつつリクオはそう言った。
「借り物競争?」
一緒に食べるように誘われ、遠慮しつつもおにぎりを食べながら聞き返す。
「うん!鴆くん応援してね!」
「任せとけ!」
にっこり笑われ、わからないままに頷いた。
お弁当を食べ終わったころ、放送が流れリクオは立ち上がった。
「行ってくるね!」
そう言いながらこっちに手を振ると駆け出していった。