未来編
□哀訴嘆願
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本当はこんなところにいるべきではない。
かつてない不安が僕を襲う。
たった2日、行き帰りを入れれば3日・・・その間に大切なものを失うかもしれない。
でも待っていると言ったからその言葉を信じて自分はここにいる。
境内は参拝者で賑わっている。
つい最近まで特に有名ではなかった小さな神社、それがあることをきっかけに一気に有名になった。
余命いくばと言われていたある芸能人が、その神社にお参りしたところ病気がよくなった。
その話しをきっかけに次々と願いが叶ったと言うものが出てきて、たった数ヶ月で有名になった。
「すっごい人だね!」
「御守り買ってこうよ!」
はしゃぐクラスメートを横目に僕は神社の中を見渡す。
有名になった神社だ、派手に飾りたててもおかしくない筈なのに御守りの売り場は大したアピールもされていない。
まるで長続きしないことを知っているかのように・・・。
(見られてる。)
神社に入った時から視線を感じていた。
妖怪とも人間とも言えない不思議な視線、神社で感じる土地神のものともどこか違う。
「奴良くん?どうしたのいかないの?」
あたりを見回す僕に不思議そうにクラスメートが話しかけてくる。
「ごめん、僕もう少し神社の中見てきたいから先に行ってて。」
そう断ると頷くクラスメートに手を振り、僕は神社の奥へ足を進めた。
視線の先に求めるものがいる。
僕ははっきり確信していた。
お社の横に林の中に伸びる小さな小道をみつける。
その小道を僕は歩く。
少しずつ上り坂になっている小道を上がっていく。
周りの木々が開け小さな滝がみえた。
その滝を背に1人の男が立っていた。
深い青色の髪を1つにしばり、中華風の着物のような服を見にまとい静かに佇むその男は僕をじっと見つめた。