未来編
□自主独立
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そろそろだと僕は深呼吸した。
「答辞、卒業生代表奴良リクオ。」
「はい!」
名前を呼ばれ立ち上がり、壇上に上がる。
手に持った答辞の紙を開く。
でもそれは形だけ、中身は全て覚えてある。
だから紙を見ずに読み上げる。
「答辞、 本日は私たちのためにこのように盛大な卒業式を開いていただきましてありがとうございます。」
つっかえることもせずに読みあげいく。
三年前中学を終え、高校生になった。
高校生になって三年間、高校生活、委員会活動そして組の活動と目まぐるしい日々を送った。
その間に背はのび、昼でも成人したときの夜の僕と同じ身長になった。
夜の身長は更にのびたらしく、気づいたら鴆くんは僕を見上げていた。
年月は着実に過ぎ、あと二年で昼の僕も成人になる。
その時までに僕はある決断を見いださなければならない。
大人になった僕が考えなければならない決断とは、跡継ぎ問題についてだ。
鴆くんを伴侶に決めた僕に表向きは反論するものはいなかった。
僕の意思なら仕方ないと納得してくれた。
しかし、それは個人の問題だったからで僕が女性と結婚しないとなるとまた別問題だ。
奴良組は直系で次がれていて、父さんもお爺ちゃんも兄弟はいないしもちろん僕もいない。
つまり僕が子供を作らなければ血筋が途絶えてしまう。
そしたら四代目がいなくなり奴良組が潰れてしまう。
組のものたちは皆それを心配している。
既に何度かでた跡継ぎの話をのらりくらりとかわしてきた。
人間の自分はまだ結婚できる年齢じゃないし、成人もまだ先だからと言って先伸ばしにした。
鴆くんの身体が弱かった頃はそれでも深く追及してくるものはいなかった。
おそらく鴆くんが長くないと予想していたんだろう。