白昼夢シリーズ
□悪夢1
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奴良本家を囲む塀の一部に崩れかけてできた穴がある。
内側から何か衝撃でも加えたかのような穴。
壊れたらすぐ修繕されるはずなのに目立たない位置にある性で忘れられた穴。
実は僕が開けたんだけどね。
更に隠したのも僕だ。
直したばかりなのに壊しちゃったから言いにくくて・・・。
それがこんな風に役にたつとは思わなかったけど。
周囲に気を配りながら穴を潜り抜ける。
見慣れた実家の庭、でた時と何も変わらないかのよう。
だけど、見た目ではわからない妖気で庭は多い尽くされていた。
黒い妖気は奴良組に昔からただよう陽気で優しく、力強い妖気とは全く違いどす黒く重く本家全部を囲っていた。
(陰気だな。気分が悪い。)
なるだけ背を低くして周囲を伺い、人目がないことを確認して僕は縁側に走った。
屋敷の中に人影を見つけすぐ縁の下に隠れる。
(今のは首なし・・・良かった元気そうだ。)
見覚えのある影にほっとする。
でも見つかってはいけない。
油断して話かけてもいけない。
いま僕は忍び込んでいるんだから。
ドスドスと大きな足音が近づいてくる。
「失礼します。鴆の兄貴、お水持ってきました。」
「おう。」
聞き慣れた声、聞き慣れた名前。
僕はそっと縁の下から顔をだした。