パラレル

□澄み渡る音楽〜望み続けた場所〜
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「おはよう!鴆!」

「はよう。」

仲のいいクラスメートの友人にいつも通りに元気よく挨拶をされ、朝からぼーっとしていた鴆は挨拶を返した。

「鴆、いつもより元気ないな!どうしたんだ?」

もともと低血圧のせいで朝は鈍い、おまけに今日は昨日の出来事のせいでまともに寝ていなかった。

「うるせぇ。寝不足なんだよ。」

「寝不足?さては昨日のライブでテンションあががりすぎたんだろ!」

昨日学校帰りにライブがあると言っていたのを覚えていたらしい、友人に指摘され鴆はにらみ返す。

「うるせぇ。」

愛想のかけらもない態度だが、それになれている友人は気にした素振りもなく笑い飛ばす。

(あれはなんだったんだろ?夢だったのか?)

憧れていた百鬼夜行の二人に会ったことをまだ信じられず、鴆は机に突っ伏した。


昼休みになり、友人と学食に向かおうとした鴆をクラスメートが呼んだ。

「おい、鴆さっき他のクラスの奴からこれ預かったんだけど。」

そう言って渡されたのは一枚の紙切れだった。

〈鴆へ
お前の生徒カードを預かっている。返して欲しければ放課後第三音楽室にこい。〉

脅迫のような手紙をみて慌て、鞄をあさる。

生徒カードは生徒手帳に入っている学生用身分証明書だ。

生徒は必ず持ち歩くように義務づけられている。

いつも入れていたはずの財布に入っていないことに今さら気付き、鴆は慌て手紙を読み返す。

(一体いつ落としたんだ!?)

用事がないかぎりみたりしないからすっかり忘れていたが、落とした覚えが全くない。

(誰が拾ったんだ!?)

差出人の名前はないのかともう一度手紙をみた鴆の瞳が下のすみに書かれた字に止まった。

手紙の右下に小さく書かれた“畏”の文字、見覚えのある筆跡に言葉もでずに見つめ続ける。

(まさか・・・まさか・・・。)


放課後になり、鴆は第三音楽室の前に来ていた。

この学校は特別進学コースと普通科にわかれるわりと有名な進学校だ。

鴆が通うのは普通科で、他の学校と学力の差は少ない。

反対に特別進学コースは学力が県内でもトップを誇り、授業内容も全然違う。

特別進学コースはテストの点により免除される科目も多く、生徒は必要な授業だけを受ける。

そのため普通科生徒との関わりはほとんどない。
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