日常*爛漫

□秋雨
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突然ぽつりと、
私の頬に冷たい感覚があった。

「あ、雨…」

「えぇっ!今日は晴れだって天気予報では…」

そうリーが言う間にも、ぽつりぽつりと雨の雫が空から落ちてきた。
次第に激しくなっていく。

「これは、雨宿りだな」

ネジは空を見上げながらそう呟いた。

「早く行きましょ!」

私達は走って雨宿りが出来る場所を探す。

「あそこにしましょう」

リーが指差す先には、小さな屋根。私達は急いでそこへ駆け込んだ。

なんとか雨は凌げたが
服はすっかり濡れてしまい、髪からもぽたぽたと水が滴り落ちる。
それに屋根が小さいせいで端にいる私は、肩に少し雨が当たってしまっていた。

「長雨になりそうだな」

ネジの言葉を聞き空を見上げると、黒くて厚い雲がどこまでも続いていた。

「もう、風邪引いちゃうわ」

だんだん濡れた服に体温が奪われていく。
すると隣にいたリーがこちらを振り向き、驚いた様子を見せた。

「テンテン!肩が濡れてるじゃないですか」

「屋根が狭いからね」

仕方ないわよ。と私は笑うが、リーは真剣な顔をしてこう言った。

「僕と場所を交代しましょう」

その言葉に、今度は私が驚く。

「でも、リーが濡れるわよ」

「大丈夫です!僕は雨なんかには負けませんから」

リーはニッと笑った。



「そう…ありがと」

言葉に甘えて、私は急いで場所を移動する。

ネジとリーに挟まれた私は、ちらっとネジの方を伺った。
見ると、ネジの肩も雨でびしょ濡れである。

「ネジも濡れてるじゃない」

「狭いからな、まぁ仕方ないだろう」

そう言ってネジはそっぽを向く。



しとしとと降り続く雨の中
肩が触れ合うほど狭い空間の中で、体の左右に二人の温かさを感じながら私は微笑む。


そして小さく
ありがとね、と呟いた。


秋雨は、まだまだ止みそうにはなさそうだ。




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