桜李*恋爛漫

□心、桜舞う
2ページ/4ページ




―――



ここは病室。

検査の結果、僕はしばらく絶対安静とお医者さんに告げられ、入院することとなった。

ベッドに寝ながら、僕は天井をぼーっと見つめる。
さっきから、ずっと同じ事を考えていた。


『私は…リーさんの事が好きです』


優しいサクラさんの声。
大好きな、サクラさんからの告白。
それから、頬に残る温かい感触…。
思い出すだけで、顔が赤くなる。

僕は今だに信じられずにいた。
これは夢じゃないのか。
寝て起きたら、実は夢でしたってことも有り得るかもしれない。
そう頭の中でぐるぐる考えていると、

コンコンと、病室のドアをノックする音が聞こえた。

「どうぞ」

僕が声をかけると、静かにドアが開き

「失礼します」

「あっ…」

サクラさんがゆっくりと入ってきたではないか。
そして彼女は僕と目が合うと、恥ずかしそうに下を向きながら近づいて来る。

「あ、あの…どうでしたか、検査結果は」

「…しばらくは、絶対安静と言われてしまいました…ですが、サクラさんが早急に治療してくれたおかげで、大事には至らなかったみたいです。
本当にありがとうございました」

お礼をいうものの、目を合わせられない。
お互い硬くなっているのが丸わかりであった。

「そうですか…よかったです」
「えぇ…」

そしてしばらく沈黙が続く。
一体何と話しかけたらいいのか、迷っていると

「あの…リーさん」

急にサクラさんは口を開いた。

「はい」

僕は返事をして、ちらっとサクラさんの顔を見る。するとサクラさんもこっちを見ていたようで目が合うと、サクラさんは少し頬を染めた。
「その…」

目を伏せ、言いにくそうにもじもじしている。

「今度…あ、もちろん退院してからなんですけどっ!前行けなかった団子屋に、一緒に行きませんか…?」

ドキッと僕の胸が高鳴った。それはサクラさんに誘われた、というせいだけではない。
顔を赤くしながら一生懸命に言うその姿が、とても可愛いらしかったからだった。

「もちろん、いいですよ。僕も行きたかったんです。前は邪魔が入ってしまって、行けませんでしたしからね…」

そう言うとサクラさんは、ぱぁっと笑顔になった。

「よかった!…じゃあ私達の…その、初デートは団子屋ですねっ」

照れながらサクラさんは言う。

「初デート…」

その言葉で、僕の頭のモヤモヤはハッキリとした。

「…夢じゃ、無かったんですね」

「え?」

キョトンとした顔で、サクラさんは聞き返した。

「僕…サクラさんに、こ、告白されたのは、実は夢だったんじゃないかって思っていたんです。ですが…」

「私もそれ、思ってました」

「えっ」

今度は僕が聞き返す。

「告白したのは…。リーさんも好きだって言ってくれたのは、実は夢だったんじゃないかって」

すると、サクラさんは

「でも、夢じゃ無かったみたいです」

ふわりと優しく笑った。

そのほんのり頬を染めた笑顔は、まるで満開の桜の花のように綺麗で美しく、見ているだけで僕の心は穏やかになった。

「そうですね」

そう言って僕も微笑む。


「あ!そうです!」

そこではっとあることに気づき、僕は急いでベッドの上に正座をした。

「え!リーさん!絶対安静なんじゃ…!」

驚くサクラさんをよそに、僕は正座のまま深々と礼をした。


「サクラさん、こんな僕ですが…これから何とぞ、よろしくお願いします!」

言い終えた後、そっとサクラさんの顔を窺う。
サクラさんは、最初は目を丸くしていたがすぐに

「ぷっ」

と噴き出し、

「あはははっ、やっぱりリーさんですね」

そのまま笑い出した。
僕はその姿に少し戸惑いながら、

「えっ!お付き合いをするにあたって…しっかりと挨拶はするべきだなと思ったんですが!お、おかしかったですか!!」

焦りながらそう言った。

「いえ。そんな事ないです!そうですよね、挨拶はきちんとするべきですよね。ふふふっ」

そしてサクラさんは僕を真っ直ぐと見つめた後、深々とお辞儀をした。

「リーさん、こちらこそよろしくお願いします」
「はい」

サクラさんは顔を上げ、僕の顔を見るとニコッと笑った。
その姿に再びドキドキしてしまうが

「いったたたたた…!」
「リーさん!大丈夫ですか!?」

動いたせいで体が痛み出し、それ所では無かった。

「絶対安静だって言ってたのに、動くからですよ!」
「ははは、すいません…」




_
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ