桜李*恋爛漫
□心、桜舞う
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ここは病室。
検査の結果、僕はしばらく絶対安静とお医者さんに告げられ、入院することとなった。
ベッドに寝ながら、僕は天井をぼーっと見つめる。
さっきから、ずっと同じ事を考えていた。
『私は…リーさんの事が好きです』
優しいサクラさんの声。
大好きな、サクラさんからの告白。
それから、頬に残る温かい感触…。
思い出すだけで、顔が赤くなる。
僕は今だに信じられずにいた。
これは夢じゃないのか。
寝て起きたら、実は夢でしたってことも有り得るかもしれない。
そう頭の中でぐるぐる考えていると、
コンコンと、病室のドアをノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
僕が声をかけると、静かにドアが開き
「失礼します」
「あっ…」
サクラさんがゆっくりと入ってきたではないか。
そして彼女は僕と目が合うと、恥ずかしそうに下を向きながら近づいて来る。
「あ、あの…どうでしたか、検査結果は」
「…しばらくは、絶対安静と言われてしまいました…ですが、サクラさんが早急に治療してくれたおかげで、大事には至らなかったみたいです。
本当にありがとうございました」
お礼をいうものの、目を合わせられない。
お互い硬くなっているのが丸わかりであった。
「そうですか…よかったです」
「えぇ…」
そしてしばらく沈黙が続く。
一体何と話しかけたらいいのか、迷っていると
「あの…リーさん」
急にサクラさんは口を開いた。
「はい」
僕は返事をして、ちらっとサクラさんの顔を見る。するとサクラさんもこっちを見ていたようで目が合うと、サクラさんは少し頬を染めた。
「その…」
目を伏せ、言いにくそうにもじもじしている。
「今度…あ、もちろん退院してからなんですけどっ!前行けなかった団子屋に、一緒に行きませんか…?」
ドキッと僕の胸が高鳴った。それはサクラさんに誘われた、というせいだけではない。
顔を赤くしながら一生懸命に言うその姿が、とても可愛いらしかったからだった。
「もちろん、いいですよ。僕も行きたかったんです。前は邪魔が入ってしまって、行けませんでしたしからね…」
そう言うとサクラさんは、ぱぁっと笑顔になった。
「よかった!…じゃあ私達の…その、初デートは団子屋ですねっ」
照れながらサクラさんは言う。
「初デート…」
その言葉で、僕の頭のモヤモヤはハッキリとした。
「…夢じゃ、無かったんですね」
「え?」
キョトンとした顔で、サクラさんは聞き返した。
「僕…サクラさんに、こ、告白されたのは、実は夢だったんじゃないかって思っていたんです。ですが…」
「私もそれ、思ってました」
「えっ」
今度は僕が聞き返す。
「告白したのは…。リーさんも好きだって言ってくれたのは、実は夢だったんじゃないかって」
すると、サクラさんは
「でも、夢じゃ無かったみたいです」
ふわりと優しく笑った。
そのほんのり頬を染めた笑顔は、まるで満開の桜の花のように綺麗で美しく、見ているだけで僕の心は穏やかになった。
「そうですね」
そう言って僕も微笑む。
「あ!そうです!」
そこではっとあることに気づき、僕は急いでベッドの上に正座をした。
「え!リーさん!絶対安静なんじゃ…!」
驚くサクラさんをよそに、僕は正座のまま深々と礼をした。
「サクラさん、こんな僕ですが…これから何とぞ、よろしくお願いします!」
言い終えた後、そっとサクラさんの顔を窺う。
サクラさんは、最初は目を丸くしていたがすぐに
「ぷっ」
と噴き出し、
「あはははっ、やっぱりリーさんですね」
そのまま笑い出した。
僕はその姿に少し戸惑いながら、
「えっ!お付き合いをするにあたって…しっかりと挨拶はするべきだなと思ったんですが!お、おかしかったですか!!」
焦りながらそう言った。
「いえ。そんな事ないです!そうですよね、挨拶はきちんとするべきですよね。ふふふっ」
そしてサクラさんは僕を真っ直ぐと見つめた後、深々とお辞儀をした。
「リーさん、こちらこそよろしくお願いします」
「はい」
サクラさんは顔を上げ、僕の顔を見るとニコッと笑った。
その姿に再びドキドキしてしまうが
「いったたたたた…!」
「リーさん!大丈夫ですか!?」
動いたせいで体が痛み出し、それ所では無かった。
「絶対安静だって言ってたのに、動くからですよ!」
「ははは、すいません…」
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