幕恋短編集 晋作編
□私の生きる道
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ここに来るまで、ただ漠然とやりたい事をやって、友達と楽しく過ごしていた。
自分がどんな風に生きていくのかとか、考えた事もなかった。
でも、あなたと出会って
恋をして
私は私の生きる道を見つけたの…。
もう、何度目の発作だろう…。
息をするのもままならない程に咳込み、苦痛に歪む顔…。
口元を押さえた手の指の隙間から、スーッと滴る赤い雫…。
あなたが、こんなに苦しそうなのに、私ができる事と言えば、背中をさすることくらい…。
他に何かできることはないのかな…。
私は発作がおさまった晋作さんに、白湯をいれた湯のみを渡して、何か私にできる事で、してほしい事はないか尋ねてみる。
すると、私の頬を優しくなでながら、晋作さんが微笑んで言った。
「俺はお前の笑顔がみれたらそれでいい。今までの月日を、お前と過ごせた事が、俺様の幸せだ。」
その声には、晋作さんの気持ちがこもっていた。
でも…、
私と今まで過ごせた事が幸せなの?
その先は?
胸にモヤがかかったような気持ちになる。
この気持ちを晴らしたくて…、
ううん…、晴らしてもらいたくて、私は、晋作さんに尋ねる。
「ねぇ…じゃあ、これから先の幸せは?」
「え?」
一瞬、目を丸くした晋作さん。
だけど笑って、
「これから先もずっと、お前と過ごす事が、俺様の幸せだ。」
そう言ってくれた。
晋作さんは欲しかった答えをくれた。
だから私は、晋作さんがみたいと言ってくれる、とびっきりの笑顔を返した。
晋作さんが、私を優しく包む。
私は、晋作さんの広い胸に、顔をうずめる。
愛されること…。
それはとても幸せなこと…。
愛しぬくこと…。
それはとても覚悟のいる事…。
でも、晋作さんとならこれから先、何が起こったとしても乗り越えられる気がするんだ…。
ううん…。
乗り越えてやるんだ…。
例え、今世での別れがすぐそこまで、やってきていたとしても…。
魂は永遠に…。
私は、晋作さんを愛しぬく…。
それが『私の生きる道』。
終