幕恋短編集 晋作編
□未来をこの手に…
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俺の隣にいつもいるはずの、お前がいない。
ただ、隣にいてくれるだけで、自然と笑みがこぼれる。
幸せを感じる。
それが、当たり前になっていた。
お前がいない隣を見つめては、その存在の大きさを改めて認識した。
ここ数日寝込んでいるお前。
「たぶん夏バテだと思うから、大丈夫だよ。」
そう言って笑っていたが、顔色もよくないし、食欲もない。
無理に食べても吐いてしまう。
よくなる気配もなく、そんな日が数日続いたので、医者を呼んだ。
何かの病じゃないだろうな?
治るんだろうな?
もし治らない病だったら…。
今はまだ息を潜めている、自分の病の名がよぎる。
診察が終わるまで、不安ばかりが、胸に押し寄せていた。
「あの子はきっと、大丈夫だよ…。」
そう言って、肩にポンと小五郎が手を置いた。
「ああ…。」
そうであって欲しい…。
あの笑顔を
温もりを
光を
失いたくない…。
俺はオマエがいないと…!
「診察が終わりました。」
襖が開いて、医者が顔を出した。
俺は医者に詰め寄り、襟を掴みあげた。
「あいつの容態はどうなんだ大丈夫なんだろうなおいっなんとか言えっ」
「#$%&っっ…」
「晋作、落ち着けっ
そんな風にしたら何も話せないだろう?」
「あ…、す、すまん…。」
小五郎に言われて、我にかえる。
手を離して、深く一つ息をし、気持ちを落ち着ける。
「げほっ、げほっ…
ま、全く…
大した事ないのに大袈裟な…。」
その言葉で俺はまた、医者に掴みかかった。
「!!なんだとぉっっ」
「!!?」
「落ち着け晋作」
「これが落ち着いていられるかっ
あいつはあんなに苦しそうなのに、大した事ないだと
ふざけるな
医者なら、何とかしろぉぉおおっっ」
医者の襟をガッツリ掴んで、ガクガク揺らすと医者がたまりかねたように叫んだ。
「腹に子供がいるんだ!
仕方ないだろっ!」
「………な‥に…?」
思考が止まる。
今、何と言った?