幕恋短編集 龍馬編
□私の心は雨模様
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「もう最悪」
突然の大雨の中、私は寺田屋への帰路を急いでいた。
今朝、おかみさんさんが、お掃除をよく頑張ってくれたからと言って少しお金をくれたので、みんなにお茶菓子を買おうと出かけた。
そして、お目当ての茶菓子を手に入れた帰り道に、この大雨に降られたわけで…
雨に濡れないように包まれた茶菓子を抱えて必死に走る。
「………!!」
「?」
私を呼ぶ声が聞こえた気がして、そちらを振り向くと龍馬さんが傘をさして走りよってきた。
「こがな、大雨ん中何をしちょうがか」
あまり聞いた事のない龍馬さんの大きな声にびっくりする。
キョトンとしている私を龍馬さんはその広い胸に力いっぱい引き寄せた。
あったかい…
龍馬さんの顔を見上げる。
「こげに濡れて…
寒くはないかの?」
私の頬を撫でながら心配そうに尋ねてくれる。
「大丈夫です。だって龍馬さんがあったかいもん。」
私は笑顔で答えた。
「/////、ほ、ほうか…」
ふいっと、顔を横に向けた龍馬さん。
龍馬さん、顔が赤い?
どうしたんだろ?
「龍馬さん?」
「んんっっ///
ごほん。
なんでもないきに…
さて、早く帰って着替えんと風邪をひいてしまうの。」
「はい。」
龍馬さんがさした傘に二人で並んで入る。
少し恥ずかしいな…
ちらっと龍馬さんの顔を見ると龍馬さんと目があった。
笑顔を向けてみる。
「そ、それにしてもよく降るのぅ…」
あれ?目をそらされた?
気のせいかな?
「…そうですね。
でも、さっきよりは随分マシになってきましたよ。」
手のひらを空にむけて傘の外に差し出してみる。
うん、このぶんだともうすぐやむかも…
西の空も明るくなってきたし…
「ところでおんしはどこに出かけておったんじゃ?」
「あ、これ、買いに行ってたんです。」
腕に抱えていた包みを龍馬さんにみせる。
「なんじゃ?」
「お茶菓子です。みんなで食べようと思って…」
「ほうか、ほうか…
ありがとう。」
いつもの優しい笑顔を向けられて、ほっこりした。
龍馬さんの笑顔って、癒やされるよね
「いいえ。私のほうこそいつもありがとうございます。お世話になってばかりで全然恩返しできてないですけど…」
苦笑いしながらこたえると、龍馬さんの顔色が変わった。
「そがな事はない!
ワシらは…
いや、ワシはおんしがおってくれるだけで、毎日が楽しい。
おんしが笑ってくれるだけでどんなにしんどうても、元気になれるんじゃ…」
「……りょ、龍馬さん…」
熱っぽい瞳で見つめられる。
胸がドキドキしてきた
「………ワシは…
ワシは…!!」
何?
何を言おうとしてるの?