幕恋短編集 慎太郎編
□今だけこのまま…
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冬だというのに、今日は風もなく、ぽかぽかと暖かい。
縁側で姉さんと勉強会をしていたんだけど、余程、心地良かったのだろう…。
姉さんは眠りに落ちてしまったようだ。
「しょうがないっスね。」
気持ちよさそうに、俺の肩にちょこんと、もたれて眠る姉さん…。
なんて無防備なんッスか…。
オレの気持ち知ってますか?
気づいてますか?
姉さんの艶やかな髪を、優しく撫でる。
姉さんの柔らかい頬にそっと触れる。
「……ん、…慎ちゃん…。」
身じろぎしながら、寝言でオレの名を呼ぶ姉さん…。
このまま全て奪い去りたい……。
こんなオレの気持ち、貴女が知ったら、どう思うんだろう…。
狂おしい程の愛しさと、切なさと…。
肩越しに感じる姉さんの温もり…。
無邪気な寝顔…。
貴女は、本当に罪作りな人だ…。
肩ごしの温もりを、腕の中に納める。
貴女から漂う、優しい香り…。
スゥスウと規則正しく聞こえる寝息の音。
………。
お願いです…
今だけ、このまま…
誰も邪魔しないで……
終