幕恋短編集 慎太郎編
□ずっと隣に…
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「あー、ダメだ!やっぱり眠れない!」
寝ようと思っても、どうしても、目が覚めてしまう。
明日の事を考えると、どうしても緊張してしまい、落ち着かなくて、眠れず、おれは体をムクリと起こした。
「夜風にでもあたって、少し気分を変えよう。」
そう思って、おれは床を抜け出すと、廊下に出て、縁側に向かった。
明日は、おれと茜ちゃんの祝言。
おれと茜ちゃんは、明日、夫婦になる。
こんな日を迎える事が出来るなんて、思いもしなかった。
神様なんて信じて無かったけど、茜ちゃんに出逢わせてくれた奇跡に、改めて、あの社の神様に感謝しながら、廊下を歩いていると、縁側に腰掛ける背中を見つけ、声を掛けた。
「茜ちゃんも、眠れないんですか?」
「慎太さん!
…もしかして、慎太さんも?」
茜ちゃんは、おれの声に驚いて振り向くと、おれの顔を見て、表情から察したのか、そう尋ねてきた。
おれは、茜ちゃんの横に腰掛けると、
「はい。なんだか緊張してしまって、眠れなくて…」
苦笑いしながら、答えた。
茜ちゃんは、おれの答えを聞くと、笑って、
「私もです。」
と、はにかんで笑った。
二人で、顔を見合わせて、クスクスと笑いあう。
穏やかな、幸せな時間…
「なんだか、不思議な感じです。
この時代に来た時は、もとの時代に帰る事しか、頭に無かったのに、この時代で慎太さんのお嫁さんになるなんて…。」
茜ちゃんは、感慨深げにそう言って笑うと、夜空を見上げた。
「そうっすね。まさか、こんな日が来るなんて、おれも思いもしなかったっす。」
茜ちゃんの横顔を見ながら、彼女の言葉に同意すると、おれも夜空を見上げた。
満天の星が夜空に煌めく
明日は、太陽が眩しい位に、晴れ渡りそうだ…
「ねぇ、慎太さん…」
「ん?なんすか?」
茜ちゃんの呼びかけに応えると、彼女は、
「私と慎太さんは、きっと、運命の赤い糸で結ばれてたんですね。
それも、すっごく、強いので!!」
幸せそうに笑って言った。
「運命の赤い糸っすか?
…確かに、そうかも知れないっすね。時を超えて、結ばれるなんて奇跡、よっぽど強い力が働かなければ、起こりませんよね。」
おれは茜ちゃんの言葉に頷くと、クスリと笑って、彼女の肩を抱き寄せた。
「あ、あの、慎太さん…?」
頬を染めて、おれを見上げる茜ちゃんに、愛しさが溢れてくる。
おれを映す瞳を見つめながら、溢れてくる想いと、心の声を言の葉にして紡ぐ。
「茜ちゃん。
おれのお嫁さんになるって、決めてくれてありがとう。
茜ちゃん…。
あなたがいなければ、おれは、この先、進む事ができない。
あなたがいなければ、おれの全てが止まってしまう。
茜ちゃんの事は、おれが命をかけて守るから、おれの全てをかけて、あなたを幸せにするから…。
だから、ずっとおれの隣にいてください。」
まっすぐに想いを伝え終わると、茜ちゃんに微笑みかけた。
静かにおれの言葉を、聞いていた茜ちゃんは、柔らかく笑うと、
「はい。わかりました。
じゃあ、私は、私の全てをかけて、慎太さんを支えて、愛し続けますから、あなたは、私の隣で、笑っていて下さいね。
歳を重ねて、しわくちゃの、おじいちゃんとおばあちゃんになっても、ずっとですよ?」
そう言って、おれの手の上に、手を重ねた。
その手の温もりに、幸せを感じながら、茜ちゃんの手を握ると、
「はい。手を繋いで、二人で歳を重ねていきましょう。」
おれは、満面の笑みを浮かべて、抱き寄せた肩を引き寄せ、彼女の柔らかい唇に口付けを落とした。
いつまでもずっと、あなたの隣に…
そう誓いを立てながら…
終わり