幕恋短編集以蔵編
□冬の星空
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【冬の星空】
冬の星空を見上げるのが好き・・・
空気が澄み渡っていて、星がとても綺麗に煌めいているから・・・
夜中にふと目が覚めたので、羽織を羽織って少し庭に下りてみる。
この時代は無駄な明かりがないせいか、星がとてもよく見える。
降ってきそうなくらいの沢山の星々・・・
お父さんやお母さんや、かなちゃんにも見せてあげたいな・・・。
みんな元気かな・・・。
そんなことを思っていると、
「何してるんだ?」
後ろから声をかけられた。
振り向くと、以蔵がこちらに歩いてきていた。
「星を見てたんだ。以蔵は今、帰ってきたの?」
「あぁ・・・って、お前・・・‼︎」
そういうと以蔵は、私の頬を両手で優しく包み込んだ。
「だいぶ、冷えてるじゃないか、あほぅ…。」
以蔵の手の温もりが、じんわりと頬に伝わって、幸せな気持ちになる。
「あったかぁい・・・。えへへ…。」
「///,ほ、星もいいが風邪をひくぞ!そろそろ、中に入ったらどうだ?」
私から急に離れて、そう言うと、以蔵は背を向けた。
「以蔵も一緒に、星を見ようよ‼︎」
誘ってみたけど、
「馬鹿!もう丑三つ時だぞ!?とっとと寝ろ!」
と、怒鳴られた。
「ちょっとくらい、いいじゃん!以蔵の馬鹿!」
頭ごなしに怒鳴られて、カチンときて、言い返す。
「馬鹿だと!?こんな時間にそんな恰好で誘っているお前の方が、よっぽどバカだ!」
以蔵がぐりんと振り返って、また怒鳴った。
「な、何でよ!?」
なんか腹立つ〜!!
「もっと、警戒心を持て!」
「は?警戒心?以蔵がいるから大丈夫じゃん!私を守ってくれるんでしょ!?」
「///!?///」
以蔵が口をパクパクさせながら、私を見ている。
私、何か変なこと言ったかな?
「以蔵?」
名前を呼ぶとハッとしたような、顔をして、溜息をつき、
「・・・もういい・・・」
そういうと、以蔵は黙って私の隣に立って、星を見上げた。
なんだかんだ言っても、以蔵はちゃんと私に付き合ってくれる。
優しいな・・・
以蔵の優しさが温かくて、胸がポカポカするよ。
以蔵の顏を見つめていると、こっちを向いたので、ほほ笑んでみた。
「…生殺しだ…。」
「ん?以蔵なんか言った?」
聞き取れなくて、なんて言ったのか尋ねたけど、
「なんでもない・・・」
と、ひとこと言っただけで、以蔵は視線を星空に戻した。
なんなんだろ?
疑問に思ったけど、これ以上聞いても以蔵がこたえてくれないのは、わかりきってるから、私も星空に視線を戻した。
「綺麗・・・だな・・・」
以蔵がポツリと呟く。
「うん。」
相槌をうつと、私はチラリと以蔵の横顔をみてから、胸の前で手を組み、目を瞑って祈った。
煌めく星に願いを・・・
これからも 、みんな元気でいられますように・・・
みんなと一緒にいられますように…。
それから…
……以蔵の隣に、ずっといられますように…。
おしまい