その他小話
□あなたに逢いたい
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日が暮れて、空に星が一つ二つと瞬きはじめる。
夜の帳が、街を包んでゆく。
明日は7月7日。
織姫と彦星が一年に一度だけ、逢う事が出来る日。
部活の帰り道、ふと、空を見上げる。
街の明かりのせいで、降るような星空とはいかないけど、今日は晴れていて、星を隠すような雲はない。
明日も、この晴天は続くらしい。
明日は、織姫と彦星は無事に逢えそうだね。
そんな事を思っていると、あなたの笑顔が頭をよぎった。
『おれの作った未来で幸せになって』
最後に私に届いたあなたの言葉
あなたの想いを受けとって
私はあなたに恥じないように
一生懸命生きて、幸せになるって決めた
どんな時も、笑顔を忘れないように生きていこうって
けど、あなたを想うと切なくなって
涙が溢れてくる
こんなんじゃ、ダメだ
慎太さんに、叱られちゃう!
両手で顔をパーンと叩いて、気持ちを切り替える。
「何やってんだ?七葉?」
「え?お兄ちゃん⁉︎って、何、その笹!」
後ろから声をかけられて、振り向くとお兄ちゃんが肩に笹を担いで立っていた。
「ん?これか?父さんが、道場の生徒さん集めて明日、七夕祭りするんだと。んで、おれの友達の親戚が山持ってて、この時期になると笹を分けてくれるって言うから、もらってきたんだ。」
「ふーん、そうなんだ。ご苦労様。」
「おまえも、部活ご苦労さん!
今年はどうだ?全国行けそうか?」
「うーん、どうかなぁ…。
でも、一生懸命がんばるよ!」
お兄ちゃんの問いに、私は笑顔でこたえた。
すると、お兄ちゃんは笑って、私の頭をポンポンって優しく叩いて、
「あんまり無理すんなよ。」
って、言って、私の前を歩いた。
昔から、お兄ちゃんが頭をポンポンってしてくれると、なんだか元気が湧いてくるんだよね。
「…わかってるよ。」
そう返すと私は、お兄ちゃんの背中を追いかけた。