幕恋短編集 龍馬編

□私の心は雨模様
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「さぁ〜かぁ〜もぉ〜とぉ〜とぅっ



大声とともに、派手な黄色の着物が目の前を舞った。
と、同時に



「ぐぇっ



聞いた事ない龍馬さんの声がした



「俺の女に手を出すな



こ、この声…



「た、高杉さん!?」



「よう、元気だったか?」



高杉さんは転がった龍馬さんの傘を拾ってさすと、私の肩を抱きながらニカッと眩しい笑顔を向けた。



「え…あ、げ、元気です…」



じょ、状況が飲み込めない…
整理してみよう…


えっと…
確か、高杉さんが龍馬さんの名前を呼んだと同時に、龍馬さんに飛び蹴りして綺麗に着地したんだよね…



ん?
飛び蹴り?
うわぁぁああ



「りょ、龍馬さんだ、大丈夫



脇腹をおさえてうずくまる龍馬さんにかけよる。



「高杉さん、あんた
なんの恨みがあってこがな事を…」



龍馬さん、かなり痛そう



「恨みはない
お前が、俺の女に手を出そうとするから、討伐したまでだ



いや、私、高杉さんの女じゃないです





「何が討伐じゃ



すくっと立ち上がった龍馬さんの体にあたりよろけた拍子に包みを落としてしまった私。



「当然の報いだ





ズビシッと龍馬さんに指を指す高杉さん。



それを横目に私が落とした包みを拾おうとしたその時、



「何を言うちょうがか



龍馬さんの足が包みをふみつけた。



「ああーーっっ



「な、なんじゃ
「な、なんだ



龍馬さんの足元から包みを引っ張り出す。



「!!す、すまぬ
「なんだ?それ?」



包みを開いて見ると無残な姿になった焼き饅頭が…



「………」



「あ、あの
「お、おい










「…二人とも…
…………大っ嫌い…」







私は二人に背を向けて寺田屋にスタスタと戻った。
龍馬さんが何を言おうとしていたのか、気になるけど…
それよりも、無残な姿に潰れた焼き饅頭を思い出すと悲しくて悲しくて…


「みんなで食べたかったのにな…














私の焼き饅頭……」












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