旧作 〜TRUTH〜

□MONSTER[2004]
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─Prologue

「はぁ〜」
 アラン・ホワイトはため息を吐いた。
 周囲は薄暗く、広い地下倉庫。そのスペースを、様々な箱が埋めている。
「はぁ〜」
 再びアランはため息を吐いた。自分の不運に対する呆れが募る。
 広く薄暗い箱ばかりの倉庫に何故自分一人が孤独にいなければならないか。そもそも運転手をしている自分が何故地下にいなければならないのか。彼にできる事は自分の不運を恨む事だけであった。
「鍵を忘れたのは本当にバカだな」
 いつの間にか彼は独り言を呟いていた。
 彼は地下倉庫を管理するトルーマン物産のトラック運転手である。古い地下道を利用した地下倉庫は、地上から通常使用する車両出入り口が一つしかなく、鍵を使わなければ中からも外からも開かない構造になっている。鍵を忘れたアランは、地下道からの車両出入り口を空けて、わざわざ車を地下に回さなければならないのだ。
「せめて到着が早ければなぁ」
 アランは腕時計を見て呟く。時刻は既に深夜2時を回っていた。0時以前ならば、他の人間がいた可能性もあったのだ。
「あれ?」
 地下道側の車両出入り口の扉が開いていたのだ。全開ではなかった。2m程度だ。
 彼の脳裏に、最近ネズミの被害があるという話があることを思い出した。
「一体いつから開けたままだったんだ?」
 呆れたアランは、独り言を呟きつつ扉を開いた。
 その時、闇に包まれた地下道の先にある巨大な目と視線があった。決してネズミではなかった。遥かに大きい何かが、闇の中で蠢いていた。
 そして、それは近づいてきた。
「怪物だぁあぁあああ!」
 刹那、アランは叫びながら、逃げ出した。彼はそれを見てしまったのだ。
 その後、マンハッタンの地下に怪物がいるという都市伝説が再び囁かれ始めた。
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