未成年

□汚ねェ大人になるように
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04.汚ねェ大人になるように




甲子園まであと1歩の決勝戦。
この夏初めて試合に出た順平。
9回裏1点リードで相手チームの攻撃だった。
そしてあと1アウトで勝てるチャンスだ。
相手のバッターが打ったボールが順平のいる外野へ飛んできた。
誰もが取れると思ったそのボール。
順平の真上へ来た瞬間、ボールは太陽と重なり、眩しさで見えなくなった。
ボールは順平の真横を落ち地面へ転がった。
ボールを必死に追う順平。
そしてボールを取り、ホームへ返そうと構えた時にはもう遅かった。
相手チームのランナーの2人目がホームベースを踏んだところだった。
順平のエラーで甲子園の夢は散ってしまった。
敵チームは集合し、喜びの声を上げた。
順平を応援しにきた博人達は肩を落とした。

誰だって1度や2度のミスはあるさ。
けど…ツイてなけりゃ、それはみんなの前で起こっちまう。
おまけにたったそれだけで、そいつの未来が決められちまう。
それが俺達のクソッタレ人生さ。




試合が終わり、選手室から落ち込んだ順平が出て来た。
博人はそんな順平を待ち伏せていた。
博人「よう」
だが順平は博人から目をそらし、何も言わずに行ってしまった。




次の日。
順平は学校を休んだ。
帰りに玄関で博人は加代子に言った。
博人「順平んとこ元気つけに行ってやってくんねぇか?」
加代子「ヒロは行かないの?」
博人「うん。…俺よりお前のがイイんだよ」
加代子「どうして?」
博人「…いや…つまり…ヤローが励ましてもさ」
加代子「わかった。今から行ってみるよ」
博人「ああ、元気づけてさ、学校に来るように言ってくれ」
加代子「うん。その代わりキスして?」
加代子は博人の顔の前で目をつむった。
挙動不審になる博人。
そんな博人を見て、加代子は自分からキスをした。
加代子「それじゃ!」
加代子は学校を出て行った。




その頃、学校をサボった順平は、自分の部屋で、博人と加代子、そして順平の3人で楽しそうに映っている写真を見ていた。
そして大きなため息を吐くとその写真を机の引き出しの中へしまった。
そんな時、ふと床に転がったエロ本を手に取った。
順平「フーー!!ナイスバディじゃーん!!」
順平はズボンとパンツを脱ぎ、ベッドへダイブした。

順平の両親は肉屋を営んでいる。
「あのバカはまだ寝てやがんのか?」
順平の父親は聞く。
「しょうがないわよ。あんな事あって」
母親は順平をかばうように言った。
「何があんな事だ。うじうじしやがってあの野郎」
「ちょっと!余計なこと言わないでよ?あの子がせっかくこの店ついでやってもいいって言ってくれたんだから!」
「別に嫌ならついでもらう必要はねぇんだよ?」
「そんな事言っちゃって」
そんな事を話していると店に加代子がやってきた。
「いらっしゃいませ〜」
順平の母は愛想よく加代子に言う。
加代子「順平くんいますか?」
「「え?」」
両親は驚いた。

順平はベッドに横になり、エロ本を見ながらオナニーしていた。
コンコン。
そんな時、部屋のドアがノックされた。
順平「何だよ!!」
加代子「加代子よー」
その声を聞いて順平は急いでパンツとズボンをずり上げた。
加代子「入るわよー」
順平「ちょっと待った!ちょっと待った!!」
順平は急いでエロ本を押入れに隠した。
加代子は順平の部屋に入った。
順平「…よう」
息を整えながらかっこつけて挨拶する順平。




その頃、たまり場。
博人「妊娠!?彼女が!?ハッ!ジョークだろ!」
勤「病院に行ってちゃんと調べたワケじゃないらしんだけど」
元気のない声で博人に言う。
博人「だってお前…いくらなんでも早いんじゃねぇの?」
博人はニヤニヤしながら勤に言う。
勤「相手は僕じゃない。…家庭教師らしいよ。その事話したらビビって辞めたらしいけど」
博人「…だったら何で橋に来たんだよ」
勤「相談相手が欲しかったんだよ」
博人「フッ…てっきりバージンだと思ったけどな」
勤「…もう会わないつもりだ」
博人「…え?」
博人は勤を見た。
勤「そりゃあそうだろ?別に彼女に対して変な意識は無いさ!けどだからって別の男の子供を妊娠してるかもしれないのに…」
ムキになる勤。
博人「俺は別に何も言ってねぇよ!」
勤「………」
勤は黙り込んだ。
博人「…ただ…彼女1人でどーすんのかなぁってさ」
勤「…そんな事知ったことじゃないさ…」
冷たい事を言う勤を博人は見た。




順平の部屋。
順平「心配してきてくれたんだ」
デレデレしながら言う順平。
加代子「明日学校来るでしょ?」
順平「…どうかな。みんなが冷たい目で見るのに…耐えられるか…わかんないよ。僕のナイーブなハートが…」
加代子「アハハハ!!」
吹き出す加代子。
順平「なによぉ?そこ笑うトコじゃないでしょお!」
加代子「だってもお!!」
笑い続ける加代子。
つられて順平も笑う。

コンコン!
ドアがノックされた。
順平の母が飲み物とスイカを持ってきた。
順平「ったくなんだよ!?いらねぇよ!スイカなんてぇ!!」
「いらっしゃいませ」
順平の母は正座をして加代子に挨拶する。
「あたしね、母ですぅ!うふふふ」
順平の家に初めて女の子が訪ねて来たので勘違いする母。
順平「はいはい!わかった、わかった!」
順平は母を部屋から追い出す。
「ごゆっくりね!!」

順平は呆れて笑いながら加代子の前にスイカを置いた。
順平「ごめんね!女なんか来たからさビックリしちゃってんの!」
加代子「ごめんね?あたしそろそろ行く」
順平「え!?まだいいじゃん!ほら、スイカも来たとこだしさ」
加代子「バイトあるから」
順平「………」
順平は加代子の顔を見た。
加代子「ハハ!ファーストフードよ!」
それを聞いて安心した順平。
加代子「じゃ!明日学校でね!」
順平「…うん…」
加代子は部屋から出て行く。
順平「あ!そこらまで送るよ!」
順平は加代子について行った。




辰巳「こないだは本当に悪かったねぇ」
辰巳は大学の帰りを萌香と歩いていた。
辰巳「飲めないのに無理にすすめて…」
萌香「ううん」
辰巳「神戸正興から誘いが来てるんだ」
萌香「新聞に出てたわ」
辰巳「当初の予定通りってだけだけど…萌香は?卒業したらどうするつもりだい?」
萌香「あたしは…まだ2年だし…漠然としか考えてないわ」
辰巳「…結婚してくれないか?」
突然のプロポーズに萌香は立ち止まった。
辰巳「唐突なのはわかってる。けど、スポーツ選手は食事の管理や、何より精神的な支えが欲しくなる」
萌香「………」
萌香は黙り込んだ。
辰巳「なんかこっちの都合ばっかりみたいだけど」
萌香「…あたしの事を…よく知らないのに?」
辰巳「知ってるさ。萌香のイイとこなら全部」
萌香は辰巳から目をそらした。
萌香「…突然で…何て返事したらいいか…」
辰巳「もちろんゆっくり考えてくれていいよ」
辰巳は笑顔でそう言った。




夜になり、博人は1人、家に帰っていた。
家の前に着くと、そこにはうずくまったデクがいた。
博人「デク!」
デクは嬉しそうに立ち上がった。
いつもより服は泥だらけだ。
博人「何だよお前。昨日から顔見せないから心配してたんだぞー?」
博人は泥だらけのデクの服に気が付いた。
博人「お前どうした?…あ、バカだなー!またどっかで転んだんだろー」
デクの服に付いた泥をはらう博人。

博人はデクを家にあげ、風呂に入らせた。
博人は制服のズボンをまくりあげた。
湯船の中にもぐるデク。
デク「ぶはーーーー!!」
博人「やめろって!水が飛ぶわ!」
博人はシャンプーを手に取った。
博人「よし、頭洗うぞ」
デクはおとなしく頭を博人に向ける。
博人「はい!いきますよー」
デクの頭にシャンプーをかける博人。
そしてごしごしと泡立てた。

博人「俺は神谷にエラそうに言える立場じゃねぇよな!」
デクの頭を洗いながら言う。
博人「カー子と寝ちまったんだからよ…。もちろん順平の奴がアイツの事好きだなんて知らなかったよ。ただ…萌香も…アニキに抱かれてんだと思うとさ!なんかこう…切なくなっちまってさあ!」
デク「にゃははは!!」
突然笑い出したので博人はデクを見た。
デク「りゅーぐーじょー!」
デクはカメを見せて言った。
博人「え?」
デク「いいとこ!」
博人はほほ笑んだ。
博人「いいとこ」
デク「いいとこー!」
博人はデクの頭をまた洗い始めた。
博人「かゆいところはございませんかー?大丈夫ですかー?」




次の日、恐る恐る学校にやってきた順平。
だが校門をくぐれないでいた。
「おいーす!!」
誰かに背中を押された。
順平「うわあ!!」
振り返ると博人だった。
順平「何だよ!お前かよ〜…」
博人「どうだい?ナイーブなハートさんは」
順平「あ?」
博人「ハハ!あ、いや昨日の夜、カー子から電話があってさ」
順平「…あ…」
順平はいつもの元気がなかった。
博人「なんだよ!?青い顔しちまってよ〜!誰も気にしちゃいねぇよ」
順平「…わーってるよ!!」
順平は校門の中へ入って行った。

2人で階段を上がっていると後ろから加代子が走って来た。
加代子「おはよ〜!!」
加代子は順平の前に立った。
加代子「おはよ!ナイーブなハートさんっ」
順平「またそれかよぉ」
加代子「英語のプリントやってきた?」
博人「あ!!ヤベー。忘れた」
順平「そんなのあんの!?」
加代子「知らないわよ!あたし」
加代子は教室の方に歩きだした。
博人と順平は加代子を追いかけた。
博人「なんだよ!!写させろよ!」
順平「俺にも俺にも!!」
加代子「知ーらない!」
順平「あれー?」
博人「なんでよ!ちょっと!!頼むよー」
加代子「知〜らないっ!!」
加代子は逃げた。
2人は加代子を追う。

古典の授業。
「田辺ー。この問題答えてみろ」
順平「は、はい!!」
順平は立った。
まったくわからない順平。
順平「イイ質問ね!あなた答えなさーい?」
おちゃらけて博人に言った。
クラスメイトは大ウケした。

お昼休み。
使われてない教室でタバコを吸う順平。
博人「順平、先公きた」
順平「え!?ヤベー!!」
順平は慌てふためいてタバコを窓から投げた。
博人「嘘ぴょーーーんっ!!!」
順平「はああ!?」
博人は逃げた。
起こった順平は博人を追いかけた。

放課後、順平と博人は掃除当番。
ホウキでホッケーして遊んでいた。
順平「よっしゃ!ゴール!!オーケーーーイ!!!!」
順平ははしゃいでいた。
どうやらいつもの元気が戻ったみたいだ。




掃除が終わり、博人は教室で進路調査書とにらめっこしていた。
順平「ヒッロッピー♪」
順平は博人の調査書を覗きこんだ。
順平「何お前、受験すんの!?」
博人「いや、まだ決めてねぇけどさ。お前は?」
順平「俺は適当に専門学校にでも入るよ。予備校行くガッツもねぇしよ!どの道、肉屋つがなくちゃなんねぇんだ。それまで適当に遊ぶよ」
博人「神谷は東大1本らしいぜ」
順平「頭の出来が違いすぎんのよ。俺もヒロも下々の人間なんだからよ〜」
博人「………」
順平「わりぃ、今日さ俺部室行って荷物取って来るわ!」
博人「あ?」
順平「いや、もう引退だからよ」
博人「あ〜、じゃあな!」
順平「おう!」
順平は教室から出て行った。
博人「…はっ…下々の人間か…」
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