☆帽子屋.・+

□ひさしぶりだね。
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「アリスぅーっ」

…この声は、きっとあの子!

ガチャ

ドアを開けるとほら、

いつもの帽子。

「よぉー。アリス!!」

「いらっしゃい。帽子屋。」

「おぅ!」

私の部屋にいるチェシャ猫の首が、いつもの口調で、問いかけてきた。

「アリス、誰だい?」

「げ、猫もいるのかっ」

「当たり前でしょ。さ、上がって上がって!」

帽子屋をリビングのソファーに座らせた。

「お茶いれるね。」

チェシャ猫の首を帽子屋の隣に置き、ティーセットの用意を始める。


リビングからは、元気な帽子屋と、いつものチェシャ猫の声が響いていた。

すべてが終わったあの日から、私はチェシャ猫以外の住人を、一度も見たことが
ない。
だから、帽子屋が来てくれて本当に嬉しい。

…嬉しい。




「お茶だよー」


紅茶と、ちょびっと可愛いクッキーと、スコーン、チェリーパイを出した。

「あれ、帽子屋、背伸びた?」

出会った当時は、私より小さかった…よね?

「俺だって、伸びるときゃー伸びるんだよっ」

「ふーん。男らしくなったじゃん。袖から手が見えてるし?」

「ばっ、ばかっ。そんなのわざわざ口に出して言うもんじゃねぇっての!」

帽子屋があわあわしてる。

「ねぇ?チェシャ猫?」
「帽子屋だからね。」

「あっそ。」

期待通りの答えだった。
帽子屋がティーカップを取る。

帽子の下にカップを突っ込んで一口のんだ。

「…。」

「なに?」

急に黙り込まれると…。
「…アリス。」

「うん?」

「お前…紅茶にミルクを…いれるときゃー…」

「え」

「最後にいれろぉっ!!」









「はぁー、細かいなぁ」
「僕のアリス。帽子屋だからね。」


「あ、そういえば、今日ネムリンは?」

いつもはいるのに…

「あ?あぁ…。ネムリンは、女王に捕まってる。」

「えぇ!?ネムリン!首っ、首ーっ!!」

ネムリンの首を心配して、若干パニックにおちいった。

「それがさ、ネムリンの奴、お菓子の食い過ぎで太って今、首見えねーんだ。そ
れで…」

「女王様がおこったのね。」

「あぁ」

と、面白そうに語った。

その辺にあったクッキーをつまむ。

時刻は午後4時。

「あ、やべ。俺帰らねーと。」

「あ、4時だもんねー」

「おう。じゃあな、猫、アリス。」

「…うん。」

ちょっと寂しいな。

玄関に向かって帽子屋が歩き出した。

「うわっ!」

帽子屋が、椅子の足につまづいて…転んだ。

「いててててっ」

「大丈…」

帽子が床に転がっていた。

初めて見る帽子屋の顔。
サラサラの金髪に、深い深いブルーの瞳。薄いピンク色の唇。

とてもきれいな顔立ち。

「う゛、わわっ」

あわてて帽子をかぶった。

「…帽子屋、かっこいい。」

「ば、ばかやろっ!」

めちゃくちゃ照れてる。
そんな帽子屋がおかしくて、かわいくて、とても愛しい気持ちになった。
「…また、くるからなっ!」

「うんっ」

そういって、帽子屋は帰っていった。

練習しよっかな。紅茶のいれかた。

リビングに戻ると、いつものにんまり顔が、より一層にんまりしていた。

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