小説

□やさしい手
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わたしは彼の手がすきだ。そのやさしい手は世界を包み込むように守っていて、その手はわたしたちを支えてくれている。そう、わたしの彼はヒーロー。みんなのヒーロー。しかもキングオブ、なんてついている。わたしはそれが誇らしくて、少しだけ寂しい。

「すまない、行かなければ…」
「仕方ないよ、事件だもん。」
「埋め合わせは必ずするよ」

彼は本当にすまなそうに眉を寄せて言った。仕方ないなんて口先だけ。本当は行ってほしくないんだ。デートのときぐらい一緒にいたい。

「気を付けてね」
「ありがとう」

彼を困らせたくなくて、わざと明るくふるまう。そっと、わたしのすきな、やさしい手に触れた。わたしたちを守ってくれるやさしい手。おまじないをかけるようにひとつ口づける。未だすまなそうにしている彼を「いってらっしゃい」と見送って、空に手をかざしてみた。すこしでも彼に届きますように。わたしの彼はスカイハイ。

おわり



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