小説

□君愛し
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今日もそこに君の笑顔があるから僕はヒーローとしてがんばれるんだ。まだ志半ばだけど、もし一人前のヒーローになったら伝えよう。僕がヒーローということ。そして、あらためて君が好きだと―。

「イワン君、お天気でよかったねえ」
「そうだね」
「イワン君と居られるだけで嬉しいけど雨だとなんだか悲しいのです」

えへへ、と笑って僕の腕に腕を絡み付けてくる。何気ないスキンシップは嬉しいけれど半分恥ずかしくなって、僕は話題を変えた。

「か、買い物に行くんでしょ?」
「あ、そうだったー」

街中で立ち止まって、
んとね、と顎に指を当てる。少し考える仕草を見せてから彼女は言った。

「イワン君は何が食べたい?」
「え?ぼ、僕…」

突然の問い掛けに少し考えて

「和食、かな…」
「和食かあ…じゃあ今日は和食にしようね」

僕たちはスーパーマーケットにきてじゃがいも、人参、いんげん豆に豚肉。今日は肉じゃがなのだろう。ふんふん、楽しそうに鼻唄を唄いながら次々食材を籠に入れていく。

「籠持つよ」
「そこまで重くないよ」
「僕に持たせて欲しいんだ」
「ありがとう」

花も綻ぶ笑顔で僕を見上げる君に愛しさが募る。その時不粋にもコール音が鳴り響いた。

「ちょっとごめん」
「?」
「ごめん、えっと、用事がで、きちゃったんだ」
「そっか、じゃあ仕方ないよね。また今度ね」

名残惜しい気持ちと申し訳ない気持ちで彼女を省みた。目が合うと笑って手を振ってくれた。彼女を騙しているようでチクリと胸が痛んだ。今度会ったら打ち明けよう。ぐっと決心して僕は現場に急行した。



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