小説

□夕暮れ
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夕暮れの公園で散歩をしていたら、犬がわたしの方へ走ってきた。飼い主はどうしたのかリードをつけたままの犬は尻尾をブンブン振ってわん!と吠えた。

「お前ご主人は?」

犬の頭を撫でているとすぐに飼い主らしき男性が走ってくる。左手にフランスパンを抱えて。

「こら、ジョン」
「ジョンっていうの」
「私の不手際ですまない」

男性は犬のリードを持つとわたしの方へ向き直るとすまなそうに謝る。

「犬は好きだから構わないわ」
「そうか、それならよかった」

男性はキラリ白い歯を見せて爽やかに笑った。立ち話もなんだからとベンチに座って話をする。彼の名前はキースさん。いつもこの公園に犬―ジョンの散歩にくる、とか他愛のないことをつらつらと話した。

「大分話し込んでしまったね。すまない」
「お話出来て楽しかったわ」

気づいたら辺りは薄暗くなっていて、ジョンは退屈そうに臥せていた。

「また会えないかな?あ、いや、君がよかったらでいいんだが…」

喜んで、そう言うとキースさんは「よかった、それはよかった!」なんて安堵の表情を浮かべるものだから、わたしまでなんだか嬉しくなってしまった。わたしたちは次会う約束をして別れた。


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