小説
□温もり
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これだから冬は嫌だと思う。体温の高い、彼の温もりが恋しくなるからだ。冷えきっている室内にぶるりと震えて私は堪らずヒーターのスイッチを入れた。それでもまだ寒くて珈琲でもいれようとしたらチャイムが鳴る。モフモフのスリッパをパタパタ鳴らしながら玄関へ急いで扉を開けた
「よっ、名無子」
ちょうど会いたいと思っていた人がそこにはいた。
「虎徹さんどうしたんですか?」
「会いたくなってさ」
立ち話もなんだからと中に入ってもらう。ソファに座って二人で珈琲を啜る。
「最近お互い忙しくて会う暇もなかったろ?」
「私も会いたかった」
「可愛いこと言ってくれるじゃねえか」
くしゃくしゃと髪を撫でられる。私はたまらなくなって虎徹さんに抱きついた。
「おっと、そんなことしたら襲っちまうぞ?」
「虎徹さんならいいです」
「名無子…」
私たちはそっと唇を重ねた。虎徹さんの温もりは心地好くてうっとりしていたらそのまま押し倒された。私たちの夜はまだ始まったばかり。
おわり