小説

□お月様ほしい
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ぽっかりお月様
こんな夜は君が泣いている
そんな気がして
僕は君の家まで足を運ぶんだ

「ナムコいるの…?」

オンボロアパートの一室に
君は住んでいる
鍵は開いたままだ。
僕はそっと
扉を引いた。

「ひっく…イワン?」
「そうだよ」

案の定、君は泣いていた。
仄暗い部屋の中で
か細い肩を震わせている。

その光景は
日本画に出てくるような
幽鬼のように
寂しくも、
美しかった。

「イワン、みんな酷いのよ」
「どうしたの?」
「私の事、気味が悪いって」

普段気丈に振舞う君を
庇う術さえ持ち合わせてない
弱い僕。

そんな僕に見せる
本当の君。

「イワンは私を好きでいて」
「嫌ったりなんか、しないよ」

縋る君を抱きしめた。
僕だけは君を嫌ったりしない
僕だけは、君の味方だ。

そうすることでしか
君を繋ぎとめることが
出来ない
ずるい僕。



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