小説

□大嫌いなあんた
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あたしはあんたが思ってる以上にずっと頑丈で攻撃的よ。だからあたしはあんたに屈したりしない。あんたに守られるような”カワイイオンナノコ”じゃないんだからね。わかっている?フィフス―渚カヲル。

「もちろんだ」

エヴァのモニター越しから彼―渚カヲルが笑っているのがわかった。まったくもって気に食わない。あたしはあんたみたいなのが大嫌いなんだ。いつも余裕ですって涼しい顔つきもなんでも知っているような言動も。ぜんぶ、ぜんぶ、ぜーんぶ嫌い。ムシャクシャしたからそのあとの戦闘訓練で大暴れしてみた。まるで暴走したみたいに大暴れした。パレットガンを乱射して、プログレッシブナイフを振り翳して、シンクロ率もめちゃくちゃ。そんな状態で使途の残像と闘うあたしを嗤うように。あんたはあたしの前に現れた。赤木博士から大目玉を食らったあとのことだ。あんたはいつも笑ってる。むかつく。むかつくむかつく。

「やあ」
「出たな電波男」

嫌い。嫌いだけど。あたしがエヴァに乗ってるとき日常で困ってるときすべて助けてくれたのもあんただった。あたしはあんた―渚カヲルを全面的に嫌ってるのにどうして?一度聞いてみた事がある。

「好きな子を助けるのに答はいるのかな?僕は君に生を望むよ」

そしてやっぱ哂った。ようするにあんたはばかなんだ。あたしは笑ってやった。でも心から笑えなくてなんでか涙が流れてきた。

「笑ってくれないか?君に涙は似合わない」

渚の手は暖かかった。要するに馬鹿なんだ。渚カヲルは。いい?渚カヲルよく聞きなよ。あたしはあんたのことが嫌いだ。だからあんたを傷つけるのも苦しめるのもあたし。あんたを憎んでいいのもあたしだ。一生好きになんてなってやんないんだから。覚悟しなさいよ、渚カヲル。

「ああ、やっぱり君はそのほうが似合う」

渚は笑った。ああ、やっぱりばかだ。


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