小説

□好きを伝える
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好きだとその一言が言えたとき、お前はどんな顔するんだろう…。例えば授業後―チャイムが鳴って、休憩に入った瞬間。

「あ、あのよ…す、すす」
「え、あの世?」
「ばっか!ちげーよ!」
「どした田中?顔赤い」
「す、き…隙だらけだぜ名無し」
「ぎゃ!く、擽ったっ」

上手く言えなくてもどかしくて、誤魔化しなんて俺らしくないことをしちまった。トイレで顔を洗って自分に語り掛ける。俺は出来る男だぜ、田中龍之介!お前なら出来る。

「よし!」

今度こそ仕切り直し。今度は部活の最中に然り気無く。接近、接近して―

「おい名無し」
「なに、田中」
「す、し、」
「寿司?部活中に何いってんのあんた…」
「ちげぇよ!だから…お、お前が、」
「…もどかしい」
「し、清水先輩!?いつから見てたんすか?」
「はじめから」

まじか、というか気付いたら周りの部員どもも見てやがった。見せもんじゃねーっての!

「こ、来い!」
「うえ!たな田中っ」

名無しの手を引っ張って体育館から全力失踪。

「た、たな…ちょ、とま」
「あ、わ、わりぃ…」

体育館から大分離れたところで止まる。校庭から部活をする声が響いてる。息を吐いて、俺は今度こそ覚悟を決める

「えと、す、きだ名無子」
「ええっ!」
「んな…驚くことかよ」
「あ、ごめ…てか名前」
「おおお、おう!わりぃ」

俺カッコわりぃ…。こいつの顔まともに見れない。今どんな顔をしてるんだ

「あたしも、田中好き。」
「ま、まじか!」
「坊主で目付き悪くて下級生は泣かすし、清水先輩にもデレデレだけど、そんなあんたが好き」
「おい、悪口ばっかじゃねーか!」
「ごめんごめん。部活もどろ?」

差し伸べられた手をとる。名無しに好きと伝えたら意外とあっけらかんと俺を好きと言ってのけた。ったく、俺の葛藤返せこのやろう…。

(田中先輩お疲れっす)
(がんばったな田中)
(こいつら見てやがったのか!?)

―好きを伝える



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