小説

□玩具の指輪
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幸せだ―しみじみとシンジは思う。最初の頃、名無子といることでEVAに乗ることを忘れようとしていたシンジだったが、その考えは最近変わってきた。名無子やトウジ、ケンスケだったりとの日々を守る為にEVAに乗る。それでいいのだと思うようになった。それは良い傾向だと、彼の保護者である葛城ミサトは想いを巡らせた。

「どうしたの?難しい顔」
「あ、ごめん…なんでもない」
「変なの…」

夏も終わりに近いというのにまだ暑い。二人は駄菓子屋のベンチに座ってアイスをかじる。シャリシャリとした食感のそれ(ラムネアイス)は口の中に含むとすぐに解けた。

「あ…懐かしい…」

ふと名無子が声をあげた。シンジも視線の先を見る。くじであった。番号式の―番号を破ると中に景品があったりするそれである。

「本当、懐かしいね」
「うん、おばちゃん1回」

名無子は早々にアイスを食べ終えると代金を払い、くじを引く。惜しくもはずれだったようである。

「はずれちゃった」
「僕も、1回やってみようかな」

お金を払うと適当の番号を破る。すると当たりだったようで出て来たのは玩具の指輪だった。

「あ、かわいい」
「でも僕男だし…」

ガラス玉のついた安っぽいそれは太陽に反射してキラキラと輝いている。

「貸して」
「いいけど」

言われるままに指輪を渡すと、名無子はシンジの手を取ってから、更に薬指を押さえるとシンジの薬指に指輪を嵌めた。

「姫、受け取ってください。」
「ちょ、名無し!?!」

そのまま指を口元に持っていくと口づける。

「なーんて、って碇くん?」
「いや、あのその…こういう時どうすればっ」
「や、ごめ!悪ノリしちゃった」

慌てるシンジに釣られて名無子も慌てふためく。なんだかそれが可笑しくて、二人は笑い合うのだった。

(その…いつかは僕が…)
(え、)
(いやいいんだ!なんでもない)


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