小説2

□感謝を伝える。
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先輩はマネージャーで俺は部員だから、不自然なことなんてなにもない。だから行け日向翔陽。

「あ、ちわっす。今日も良い天気ですね名無し先輩」

俺は話し掛ける、バレーボールに向かって。

「日向よ、それは名無しじゃなくてボールだ」
「わ、わかってます。だからこうして練習を…」

田中先輩に爆笑されたけど、おれは先輩にカッコ悪いとこ見せたくない。カッコ悪いとこ……

「ううっ……」
「今度は腹かお前」

どこまでも小心者なおれはいつまで経っても名無し先輩と話せないままだ。入学式で腹を痛くした俺を保健室に連れていってくれた優しい先輩。気持ちは言えずともお礼くらいは伝えたい。だから俺は。

「名無し先輩!!」
「君は、日向くん?」
「あの時は…あ、あ、」
「?」
「ありがとうございます!」

やっと言えた。先輩はキョトンとした顔をしていたけど、すぐ優しい笑顔になって「どういたしまして」いった。しばらくその笑顔に見惚れていたら、田中先輩に殴られた。

(鼻の下伸ばしてんじゃねぇ)
(の、伸ばしてなんか!)


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