小説2
□赤い夕日
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寄り道した帰り道、空には真っ赤な夕日が僕たちに迫っていた。この赤は君を連れ去ってしまうのではないか、そんな気がして僕は視線を落とした。
「夕日、綺麗だね」
「そうかな、僕は嫌いだ」
「そっか」
君はそう答えるだけで深くは追求してこない。それは少し寂しくて少しだけ有り難いことだと僕は思う。
「碇君、手を繋ごう」
「へっ!?」
急に君がそう言ったものだから僕は間抜けな声をあげた。勿論嫌じゃないけれど。君の手が伸びてくる、僕の四本の指を包み込むように絡み付く。それは暖かくてとても安心した。
「手あたたかいね」
「うん」
繋がっていれば君はどこにもいかない。そんな気もして、僕は君の手を握りしめた。
「名無し、ありがとう」
「なに急に?でも、どういたしまして」
くすくすと君が笑う。その笑顔に見惚れつつ、単純な僕はこんな夕暮れも悪くないと思うのだ。