小説2
□わかれうた
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煙を燻らせながら、過ぎ去って行くあの人の背中をただ見送った。たった一夜限りだったけれど語ってくれたオールブルーという夢、仲間の話。それから口先だけの愛の言葉。
「クソ愛してる」
去る前にくれた口付けは煙草の味がした。煙草は苦手だ。だけどその時ばかりは不快に感じなかった。もうあの人は私のもとへ帰ってこないのでしょう。わかっている、わたしに彼を止める資格はないし、もう会うこともないのでしょう。全部わかっている。小さくなってゆく背中をただ見送りながらも不思議と私の心は凪いでいた。
(別れと幸せは紙一重)