Truth isn't always correct.

□Truth isn't always correct.
2ページ/6ページ


その夜、フィディオはふと目を覚ましました。
家の中が五月蝿かったからです。
1つはお父さんの酔っぱらった声。
もう1つは何かを殴るような音。
何を殴ってるのかは簡単に予想がつきました。
多分、殴られているのははシイナです。
音の方向からしてそうでした。
あの女の人の声も聞こえます。
まあ、隣の部屋だから不思議ではありません。
ただ不思議なのは、シイナの声が何も聞こえないことでした。
そう思いながらも、フィディオは眠りにつきました。
今でていくと自分も危ないと思ったからです。

次の日、起きて戸を開けると、ところどころに包帯や絆創膏があるシイナがいました。
「はよー。」
「おはよう。ねえ、それどうしたの?」
「昨日階段から落ちちゃってさ、」
でもフィディオは分かっていました。
きっと昨日殴られた痕です。
自分が殴られたと分かってるのはシイナにも分かってるのでしょう。
何も言わずに、
「へえ……痛そうだね。」
とフィディオが言って別れました。
あの女の人が睨んでいたからです。
「フィディオ。今からあの子と話しちゃだめよ。会ってもダメ。触るなんてとんでもないわ。
 私はフィディオ・アルデナを引き取りに来たの。あんなクズがいるなんて吐き気がするわ。
 まったく、もう少し大きければさっさと家を追い出すのに。」
女の人はフィディオの前で堂々と姉の悪口を言いました。
別に、シイナが嫌ならお父さんとシイナを追い出せばいいじゃないか、と反対しようと思ったけど、
フィディオにそんな勇気はありませんでした。

本人たちに自覚はありませんが、アルデナ姉妹はわりと有名です。
この世界に何人しかいないと言われている「超能力者」でした。
それも、なにもずるをしないで、生まれた時から持っていたのです。
お父さんがフィディオにサッカーをさせたのは、能力のせいで虐められるのをサッカーのせいに変えるためでした。
今は「必殺技」や「学園都市」のおかげで少しはましです。
でもその当時は学園都市という存在はそんなに有名ではなく、
必殺技も存在していませんでした。
アルデナ姉妹の両親は、娘がそんなものを抱えていると娘に気付かれたくありませんでした。
そういう思いは、あの女の人によって壊されたのです。

いつもみたいに、フィディオは妙に甘やかされ、シイナは暴力をふるわれ、お父さんは怒鳴る日々が続いたある日。
フィディオはあの女の人に呼ばれました。
「フィディオ。ちょっとここ触ってみて。そして治れ、って思うの。」
フィディオには何がしたいのか分かりませんでした。
目の前には血まみれの手と包丁。
「どうしたの?」
「お母さん、ちょっと包丁で切っちゃったの。フィディオがそうしてくれたら治るとおもうんだけど……」
怪しいです。怪しい以外の何でもありませんでした。
でも、反発したらどうなるか。夜のシイナみたいになるかもしれない。
仕方なく、フィディオは手を出しました。
不思議な、よく分からない力が手に集まってきます。
しばらくすると、そこには血だまりと手を赤く染めた少女とただ手が血まみれなだけの女の人しかいませんでした。
「どういう、こと……?」
「聞いて、フィディオ。貴方には超能力、っていう素晴らしい力があるの。あなたはね、怪我したところに触って、お願いするだけで怪我を治せるのよ。」
「ちなみにあのクズにもあるんだけど……貴方なんかに教えたくないわ。汚れちゃうもの。あんなクズでゲス野郎なのに、貴方より凄いことができるなんて信じられないわ。神様は不公平ね。そんな力を与えるのは私の好きなフィディオだけで良いはずよ。」
フィディオは怖くなりました。
その場から逃げ出したくなりました。
「あの豚には近づいちゃだめよ。貴方にも豚が移るから。」
嘘だと思いました。。6年も一緒に居たのです。嘘に決まっています。
「シイ……ナ?」
階段に、包帯と絆創膏と赤だらけのシイナがいました。
手すりを使って下りないと降りれないほど、体は弱っていました。
手すりにあてているのも右手だけ左手はだらりと下げていました。
この様子だと、脚も危ないのかもしれません。
「あ、フィディオ……しばらくマルコのとこにでも行ってるよ。あの人は俺のこと邪魔なんだろ?
 何、同じチームなんだから会えるさ。じゃ。」
なんとなく、フィディオはもうシイナと会えない気がしました。
フィディオのその予想は見事に的中することになったのです。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ