短編

□人間であって人間でないもの
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とある日、夕飯も風呂も終わって皆で部屋に戻った時のことだ。
俺がドアを開けると。
「あ……」
俺の部屋の机の上に7〜8歳程度だと思われる女の子が座っていた。
……。
おい。反射的にドア閉めちゃったぞ今。
「風丸君、どうしたの?」
「……ヒロト、開けてみろ」
「……何で?」
そう言いながら開けて、2、3秒固まって急いで閉める。
「風丸君、誰?この子?誘拐したの?」
「ちげーよ!今開けたらここに……」
いきなり戸が開く。
「そんなとこで言いあってる暇があったらさっさとうちに話しかけなさいよ!」
「……すまん」
「君、どこの子だい?それと何でここに……」
「うち……さあ?一応学園都市の子、ってことになってるらしいよ。あとうちがここに居るのはここに居るから」
「ここに居るからって……そりゃそうだろうけど……」
切るのがめんどくさくてこうなった、と言う感じの赤レンガのような色の髪に、赤いつり目。無駄に長い袖に、袴の代わりにスカートとなっている巫女服のようなもの。
どこかで見覚えのある容姿だ。
「仕方ないじゃない。うちに居場所の自由は無いんだから。気づいたらいつも違う場所に居るのよ」
「……でー?珍しいな、学園都市の外に居るって……」
「あれ、風丸君、知り合い?」
「いや、うちはこいつの能力しか知らん」
「いやー……学園都市に居た時に会ったことあるだけ……。いやあまさかここまで成長してないとは思わなかったけど」
「成長してない……?当たり前じゃん。うちはついさっき生まれたんだもん。成長してるもしてないもないよ」
「え、ちょっと待って。えと……とりあえず部屋入ろうか……?」

というわけで俺の部屋に入って俺とヒロトはベットに腰かけ、例の子は机のイスに座っている。
「えと……風丸君は6年前に会ったことがあるのに、この子は会ったことが無いと言い張ると……」
「うん。それで良いよ。っつかさ……君たちにはうちって何歳ぐらいに見えるの?」
「7歳ぐらい」
「俺もそのくらいかな」
「は……?嘘、何で?うちはさっき生まれたばっかなんだよ?何で……」
「じゃあ何でそんなにぺらぺら喋ってんだ?」
「さっきはいつも気づいたら違うところにいる、って言ってたし……」
あ、とようやくおかしいと気付いたのか、例の子が呟く。
「じゃあ生まれたばっかじゃないのかも。分かんないよ。うちの頭の中に、なんにも無いから。分かるのはある程度の常識だけ。それ以外は何も分からないの。……っ」
例の子の目から涙がこぼれだす。
うわ。なんか俺らが悪いみたいじゃんか……。
「なら、思い出すまでここに居るか?」
「……は?」
「いや、ここ、小さい子好きな人多いし」
「ロリコンの集まり?」
「いや、どちらかというとシスコンとホモ?」
「最近までブラコンもいたけどね〜」
「なんか雰囲気っつーかなんか壊すようで悪ぃけど、教えたろうか?お前の正体をさ」
聞き覚えがある声がして、まわりを見まわす。
「はろはろ!あ、いまはばんわーかな?」
「半田?」
窓から入ってきたのか、窓枠に腰かけている半田を見つけた。
「まあ、で、本題ね。単刀直入に言うとさ、君は今生まれたけどずっと前からいて、人間であって人間じゃなくて、生命体であって生命体じゃなくて、能力者だけど能力者じゃないパッと見セキツイ動物だよ。」
「……?ごめん半田君意味分かんない。日本語?」
「一応ジャポネーゼだぜ?」
「茶色の短髪、意味分かんないんだけど。うちでもわかるように説明しなさい」
「随分と偉そうだね……まあいいや、君はさ……」


「……どおりで見たことあるわけだ」
「ごめん、俺分かんないんだけど……」
「そん、な……そんなの、あるわけ……」
「いやあ、まさかここに出てくるとは思わなかったよ。こんな不安定以外の何でもないところにさ」
「うち、は、超能力の塊だっていうのかよ……っ」
「うん。発火能力者は体温、念動能力者が触った感じ、念話能力者が言葉、発電能力者が生体電気って感じでね」
「たまにそのAIMだかなんだかってやらが揺らぐと消えちまうってことか?」
「えと……つまりそこの××ちゃんは何回も消えては出てきてて、そのたびに記憶が飛んでるの?」
「うん、まあ……そういうことかもね。」
「うち、は……これからどうすれば……」
「俺に見つかっちまった以上、今まで通りってーのは難しいな……ん?あれ、××ちゃんガルちゃんのとこに居るんだっけ?」
「ガルちゃん……××様のことですか?」
「うん、だぶんそれで合ってるよ多分。めっちゃ多分だけど。まあいいや、じゃあさ……」



「俺の××になってよ」

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