雪男・短い夢2

□告白
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休み時間。
胡蝶が教室から出ると、男子生徒に話し掛けられた。


「あっあの!」


見知らぬ男子生徒が急に目の前に現れた事に胡蝶も驚くが
必死な顔をしているのを見て、とりあえず話を聞くことにする。


「な、なんでしょうか・・・」


隣の教室にいた雪男は、廊下で男子生徒と話している胡蝶が目に入り席を立った。


「高薙さんに・・お、お話したい事があるので
じっ時間をつくってもらいたいんです!!」


「えっと・・・ごめんなさい・・・ちょっとそういう事は・・・」


いつかの事件もまだ心に傷がついたままで
知らない男子生徒とまた二人きりになるのは避けたいところだった。


「胡蝶」


困った顔の胡蝶に雪男が後ろから声を掛ける。
男子生徒は、雪男を見ると一層慌てだしたが


「おっ奥村君と一緒でも構わないですっ!!
お、お願いしますっ!!!」


と頭を下げだした為、今日の放課後に中庭で会う約束になった。
話が終わるとすぐに礼を言って足早に去って行く。


「な、なんだろう・・・?」


「・・・・。
まぁ、僕がいるから大丈夫だよ。何も心配しないで」


「うん・・・」





放課後、ガチガチに緊張して直立している男子生徒の元へ二人は訪れた。
雪男は少し距離を置く。
それを見て戸惑いながらも男子生徒の前にゆっくり近付いた。


「あ、あの・・・・ごめんなさいお待たせてしまって・・・」


「いえ!!来て下さって!!ありがとうございます!!」


「用事って・・・・」


「お、俺!!!高薙胡蝶さんの事が!ずずっと!好きでした!!!!
ずっと好きでした!!」


「え!!」


前置きもなくいきなりの発言に
驚きで心臓がビクーーンと、跳ね上がる。


「かっ片思いで!!いいって思ってて!
でも俺、この前高薙さんが奥村君とお付き合いしてるって事聞いた時
す、すごく後悔しました!!
振られても!告白しておけばよかったって!!」


真っ赤な顔の男子生徒は目を思いきり瞑って叫ぶ。


「め、迷惑かけてすみません!!
先に進むために告白させてもらいました!!!すみません!!
ありがとうございました!!!」


直角にお辞儀をすると、雪男の前にも進み


「奥村君もすみませんでした!!」

と叫んだ。


「お二人ともお幸せに!お時間ありがとうございました!」


そう言って去ろうとした男子生徒に胡蝶も


「あ、ありがとうございます!」


と叫ぶと、男子生徒は赤い顔で少し振り向いて笑うと礼をして走り去っていった。



「・・・・」


「・・・大丈夫?」


「び、びっくりしちゃった・・・」


「そう?」


雪男は全て知っていたとばかりに、眼鏡を直した。


「・・・怒ってる?」


「どうして?」


雪男はそう言って、にっこり笑ったが
くるりと背を向けて歩き出す。


「・・・・雪男・・・・」





祓魔塾での休み時間。
トイレに立ち教室に入ってきたところで
志摩と子猫丸が胡蝶に話し掛けてきた。


「高薙さん、放課後平気やったですか?」


「え?」


何故、知っているのか驚く顔をすると
志摩はにやりと笑って子猫丸は申し訳なさそうな顔をする。


「僕のクラスメイトなんですわ。
相談されて、迷惑やからどうにか思いとどらないか話したりもしたんやけど・・・
すんません」


「なんでぇ〜?ええやん。
見上げた根性や〜ん。青春やん」


確かに、あの男子生徒と子猫丸は雰囲気も似ている。
クラスメイトというより友達なのだろう。


「こ、子猫丸さんが謝らないでください。
私は何もできなかったけど・・・あれでお役に立てたなら・・・。
迷惑なんてかかってないですよ」


「でも・・・」


子猫丸は教室の後ろで、次の授業の準備をしている雪男をチラリと見た。


「胡蝶ちゃんはそう言ってはるしぃ〜
あとは俺らが若先生のピリピリ空気我慢したらええだけの話や〜ん」


「えっ」


「や、やっぱり若先生、機嫌が悪いのその事と関係あるんでしょか?」


「えっ」


胡蝶も雪男のほうをそっと見る。
確かに、黒雪男のオーラがとぐろを巻いているようにも見える。


「めっちゃ渦巻いてるわぁ〜・・・」


「なんですか?」


顔を上げてにっこり笑った雪男は、遠くから声を掛けてきた。


「さぁ、僕の噂話はそのくらいにして授業が始まりますよ」


その笑顔のあとに冷たい風が吹いたような気がしたのだった。




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