青の祓魔師(雪男・長い夢)

□転校生
1ページ/1ページ


正十字学園
1年生教室

雪男も正十字学園では、特進科ではあるが一般の生徒。
今日も三人での登校のあとそれぞれの教室へ入る。

胡蝶の傷もすっかり癒えたが
メフィストからの答えは胡蝶の想像通り
「すぅいーません〜。私としたことが〜その時間帯ちょっとゲームに夢中だったばっかりに結界円の破損に気が付きませんで〜胡蝶さんにも謝っておいてください〜でも無事でよかったですよ〜」
とあっさりとしたものだった。

雪男も憤りを隠すことができなかったがメフィストはそんなことは気にもならないようだ。

兄の力を試すために胡蝶を利用している・・?
だが候補生昇格試験と似たようなことをしてもなんの意味もない、同じ結果が待つだけ・・そう思うのだが・・。

雪男がそんなことを考えていると
担任の教師が教室へ入ってきた。


「えー転校生を紹介します」


ザワザワと生徒がざわつく。
胡蝶に引き続き二人も転校生とは珍しいと、誰もが思うだろう。


「月形聖美(つきがたきよみ)と申します。よろしく」


まるで宝塚音楽学校に所属しているかのようにスラリと高い背に美しい顔立ち。

だけれど彼女からはなんとも言えない妖艶さが感じられ男子生徒はもちろん担任教師までが
彼女の立ち振る舞いに、見惚れている。

雪男は特に興味もなかったが
隣の席になった彼女は彼をみつめ
「よろしく」と綺麗な声で言った。



休み時間には月形聖美の評判はまた学年中に広がり、胡蝶や燐の耳にも入ってきたが特に二人も気には留めなかった。
「胡蝶ちゃ〜ん、メール頂戴よ〜」
相変わらず雪男のクラスの林は胡蝶を追いかけていた。







あわわわ、私、林君からアドレス聞いてたのすっかり忘れてたよ・・。
「ご、ごめんなさい・・。あ、あの・・ちょっとアドレス書いた紙が・・」

「えーもしかして無くしちゃった!?まじかよぉー酷いなぁ。じゃあ携帯にメールは俺からするからさっ!
先に胡蝶ちゃんのアド教えてっ」

そ、そうきちゃったか・・。あぁどうしよう。無下に断るのも失礼だし・・。

「胡蝶っ!」
「燐!」
燐だ!
選択授業の移動かな?またヘアピンしてる。

「なんだ?困った顔して。ん?何してるお前」
私が慌ててるのに気付いてくれたのか
燐は林君を睨んでしまった。
「あ?お前こそ・・あぁ奥村の双子か」
え?燐のこと知ってるんだ!?
「あはっ!俺も結構有名人なんだなぁー」

燐は照れたように頭をかくけど林君はイラっとしてる顔・・。
「お前の兄貴が同じクラスなだけだ。あっちいけよ。・・ねぇ胡蝶ちゃん、まさか彼氏じゃないよね?こいつが・・」

「「えっ!?」」

な、なにをいきなりこの人は・・!
燐もびっくりしてる!
「ちっ違うって!」
「そうです!私に彼氏がいるわけないじゃないですか!」
「そういう意味で言ってねぇよ!お前は可愛いよ!!あっいや」
り、りりり燐!?
「おい、お前なに人の前で口説いてんだよ??」キーーン
「ちっ違う!やっべチャイム!!じゃな!胡蝶」コーンカーンコーン
「あっじゃ、じゃあね!燐!林君も!」
と、とりあえず逃げられた・・。なんだか燐に申し訳ないことしちゃった・・。



席に戻ろうとした時後ろで
「高薙さんってさ〜案外ビッチかもよ・・」「えー双子で二股?それだけじゃ飽きたらず林にも?い・ん・ら・ん!」
ヒソヒソと笑う声が聞こえてきた。
あの人達、確か林君と仲がいいようなこと言ってたな・・。
淫乱か・・。
私の身体には一体どんな悪魔の血が流れているのか全くわからない。
「人型の中級悪魔が父」だって、ただの予想なだけで何の証拠もない。
よく汚らわしい目で見られていた。
陰口もたくさん聞いたことがある。
悪魔の子供なんて、どうせインキュバスのような淫魔の子供に決まっている。
大きくなればどうせ淫乱になる。
修道女なんてとんでもない。売春宿にでも連れていけばいいものを。って。
修行の途中でも、なんだか男性に色目を使っただの年上の女性に色々言われて
シュラさんが怒鳴って助けにきてくれたことがあったんだよな・・。
噂で勘違いした男性にそんな話をされたり・・。怖かった・・。
そういうこともあって、男の人ちょっと怖いんだよね。
まさか学校でこんな風に言われることになるなんて・・。

しかも・・双子って雪男と燐??恐れ多い話だよ!!絶対有り得ない!
二人に失礼だわ・・。

まぁ気にしていても仕方ない。何も知らない人達だもん。
こういう部分は耐性が結構ついちゃったな。
でも気を付けなくちゃ。別の寮に入れられるのだけは嫌だもん・・・。
二人の耳に入ったらどれだけ嫌な思いをさせるか・・。



それにしてもさっき・・
私また「なんか」発言しちゃったから燐があんなフォローを・・。

可愛いだなんて、燐のほうがピンで留めてる時とかすごく可愛いのに。
ふふ。
「高薙さん、隣のクラスの転校生見た〜?」
先生が来るのが遅いようで、皆好き勝手に話を始め出す。
「あ、噂はもう聞いたよ。とっても美人なんでしょ?」
「そうそう!さっき見てきたら奥村君の隣だったのー!どっちも羨ましい〜」
「雪男の・・」
「付き合っちゃったりしたら、ファン大発狂だよね〜私もショックだわ〜高薙さんもショックでしょ?」
「えっ」

どうにか誤魔化しながら、私は雪男のことを考えた。
雪男、しえみさんと付き合ったりしてるのかな・・。

なんとも思わないように努めているけど、たまに二人が談笑してるのを見るとズキズキする。

ファンの女の子も可愛い子たくさんいるし・・。

私もせめてきちんとした女の子だったら、告白してみようって思えたかもしれない。

でも告白するってすごく勇気がいることだよね。

うーん・・。こくはく・・。

でも告白して気まずくなって話ができなくなったらって考えたら・・できない。

告白したいけど、すごく怖くてできないよ!

今のままで・・いい・・。


あわわっこんな想像しちゃうなんて!勉強勉強!2年からは特進科にいけるようにならなきゃ!




理事長室
「奥村先生〜祓魔塾の新しい生徒さんですよ。学園では同じクラスですよねぇ〜」
メフィストの横にいるのは、月形聖美だ。
「また、こんな時期に・・何故」
胡蝶のことはすんなり受け入れたが、メフィストへの不信感が聖美の存在への不信感にも繋がった。
「いやぁ〜お知り合いのご婦人にお嬢さんの編入をかなり強く頼まれましてねぇ〜〜〜
まぁまぁ、祓魔塾のほうは人が足りないんですからこちらとしても願ったりかなったりですよ」
今日のメフィストは杏仁豆腐を食べている。
甘い香りが漂う。
「よろしくお願いします。奥村先生」
聖美は瞳を三日月にして微笑んだ・・。
唇からはなんとも言えない色香が漂うよう感じる。
それが15歳の若さと可憐さと共存しているその笑みは、
この世にないものを見ているような気にすらなる。

「こちらこそ、よろしくお願いします」
雪男も一礼する。
「・・ふふ」
「しかしお美しいですな」
「ありがとう、ヨハンおじ様」
聖美がファウストにカーテシーをして、雪男の隣へ来た。
ふわりとよい香りがする。
「それでは奥村先生、クラスの皆さんへ私の紹介をお願いします」
「はい。それではフェレス卿。」
理事長室の扉を閉め、二人で教室に向かう。
歩く距離が近いように感じて雪男は離れようとしたが
「先生、私頑張りますねっ」
と急に無邪気に笑う彼女に何故か胡蝶の面影を感じ心が波打つ瞬間があった。
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ