青の祓魔師(雪男・短い夢)

□初デート・その3「ふたりきり」
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雪男と手を繋いで、水族館をまわる。

汗、かいてきちゃったら
手の平ヌルヌルになっちゃったらどうしよう・・。

「胡蝶?」
「あっ」

さっきまで大声出して、はしゃいでいたのに私、急に黙ってた!
変に思うよね。

「あ、あの魚可愛い・・」
「うん、見て、鯛が泳いでるよ」
私達の前を鯛の数匹の群れが泳いでいく。
「雪男、美味しそうって思ったでしょ?」
「あは・・少し」
二人で笑う。
こんなに水族館って素敵な場所なんだなぁ。
海の中にいるみたい。

さっきの霊の二人がここに住み着いた気持ちも少しわかるかな・・。
私も何かあって死んでしまったら
ここにまた来てしまうかも・・。




海の生物に触れる小さいプールでナマコに触ってみる。

「うーー!きゃーーー!怖い!」
「大丈夫だよ、噛んだりしないって」

雪男がナマコを私の手に載せるけどっ!!
「いやぁーー!!もう無理っ!!」

いろんなことが初体験。
ヴァチカンにいた頃も海なんて行くことなかったし・・。
暗い幼少期にはもちろんこんな体験はなかったし・・。

ううん!過去は過去!!今は今!!

手を洗ったあとも
自然に手を差し伸べて二人の手が繋がるのが
すごく嬉しい。
こんなに幸せなんだもん・・。



大きな大きな水槽の前に二人っきり。
「ウミガメ、大きいね」
雪男の指す方向には大きなウミガメが泳いでいる。
「うん!あっちにも一匹いるみたい・・?」
「あれは岩じゃないの?」
「うそーあそこだよ??」

魚がゆったり泳ぐ姿は、癒されるなぁ・・。
雪男にノンフラッシュで写メを撮られてしまった。
「へ、変な顔してない?」
「してない、してない。秘密の待ち受けにする」
雪男ったら・・。
またそういうこと言ったら私、顔が・・。
「私も!写メ撮らせて!」
誤魔化すように、雪男を何回も撮らせてもらって
雪男とウミガメのツーショットに成功しました!

「そんなに嬉しい?」
「うん!宝物にする!」
二人で笑っていたら
私達の後ろに上へと続く小さな階段があった。
「あ・・ここ・・」
「ん」




少し上ると
小さな鐘があって"恋人達の鐘"なんて恥ずかしいことが書かれてる。
右の台にはハート型の紙とペンがあって
恋人達が書いた"○○&○○フォーエヴァーLOVE!!"みたいな
恥ずかしい紙がいっぱい貼られてる・・。

そう、ここって恋人達に人気のデートスポット!ってテレビでやってたの。
この鐘を一緒に鳴らすと幸せになれるって。
なんとここで結婚式もできるようで
デートをしたカップルがここで結婚式をして、
またここで出逢った二人が結ばれて・・という幸せの連鎖が続いてるらしい。
それで私が「素敵〜素敵〜」って見ながらつい呟いていたんだけど・・。

雪男のほうをチラリと見ると、無表情
無言だし・・。
男の人だったら呆れちゃうよね・・。

「・・・鳴らす?」
と雪男からの提案が。
「えっ」
いいの?とまたオドオドとした態度をとっちゃったら
「鳴らそう?」
って鐘の前まで雪男が連れて行ってくれた。

「あ、まずこの紙に書くんだね・・。これは胡蝶が書いて」
「は、はい」

えっと名前は誰かが偶然見たら大変だから・・。

「ふ・・二人のイニシャルと・・あと・・・」
こういうの苦手だけど、イニシャルの色を青とピンクにして・・
なんだか緊張しちゃう・・。

あとは心からのお願い・・。



"ずっと、一緒にいられますように"


また、チラリと雪男見たら、・・・無表情!?


「ひゃ〜ごめんなさいっ下手くそで!!」
「貼ろうか」
「はっはい!」


心を込めて貼ったあと、つい癖で手を合わせてお祈りしてしまった。


"ずっと、一緒にいられますように"


あ!数秒祈ってた!

「あ、ごめんなさい・・つい・・」
「・・・」

雪男、怒ってるわけじゃないよね・・。
なんだか、いつもと違うよ・・。
無理させてる??

「あの、雪男やっぱり」
「鳴らそう」
・・・雪男?



鐘は二人で手を繋いで、三回鳴らすの。
お魚さんがびっくりしないくらい小さな音らしいんだけど
その小さな音を二人で
聞き逃さないにように、一緒に聞くように鳴らす。
ずっと二人で同じものを見て聞けるようにって・・。



普段はここの鐘すごい行列みたいだし
二人きりでこんな・・
すごく、すごく素敵なシュチュエーションだよね。
でも・・

「雪男、いやじゃない?」
「僕が?」
「うん・・」
「いやなわけ、ないよ」

手を強く繋いで
一段高い階段を上り
可愛い鐘を三回鳴らした・・。



リーーン


リーーン



リーーーン・・・・



私は、もう胸がいっぱいになって
涙がちょっと滲んじゃった。
人がいなくて騒がしくないから
最後の鐘の音が消え入るまで、二人の耳に聞こえる・・。




ずっと、一緒にいたい。
お願いします
ずっと一緒にいさせてください・・。




涙がこぼれそうになるのをこらえて
雪男のほうを振り向いた時に




「胡蝶」


グッ


えっ!?身体が




「好きだよ」







私は、背の高い雪男に抱き締められ
そして


私は唇に、雪男の温かさを感じた。



雪男と私の唇が重なって



キスをしている



そのことに気が付いて私は・・私は・・・。



「胡蝶!」


足に力が入らなくなって雪男にますます抱きとめられる。



「ごめん・・」
雪男が急にそんなことを言った。

「ど・・して・・?あやまるの・・?」
私のおでこに雪男がコツンと自分のおでこを軽く合わせる。

「初めてのデートで・・キスしちゃったけど
でも、僕は君のこと、胡蝶のことが
ずっと好きだったから
昨日今日したくてしたわけじゃないんだ
だから・・・」
「嬉しいよ」
もう、涙出ないようにしてたのに無理だよ・・。
「嬉しい、すごく・・」
頬にパタパタと涙が落ちていった。

「さっきからあんまり可愛いからもう、我慢できなくなった」

雪男は私の涙を指で拭うと
また二回も口づけをしてきて

「僕も嬉しい。すごく」
って子どもみたいに強く抱き締めてくる。
その時はいたずらっ子みたいな顔で
無邪気な笑顔で
私も愛しくて
飛び跳ねて、背の高い雪男の唇に自分の唇をくっつけてみたの。

そんな私の行動に雪男はびっくりした顔をしたけど

すぐにまた
今度はおでこにキスをされて二人で抱き締め合って笑い合って
一緒に段から降りた。


「もうすぐ、開館の時間だね。お昼でも食べようか」
「う、うん!」

鐘の場所から降りたら
二人とも、かなり照れくさくなって珍しく雪男も頬が赤くなっていました。
でも
私はそれ以上に顔が熱くて、頭の中は
ずっとこの人が好きですって誓いの気持ちでいっぱいだった。

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