青の祓魔師(雪男・短い夢)

□初デート・その4「お昼ご飯」
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開館の音楽が鳴ると
たくさんの人が水族館に溢れた。
一番乗りを狙うように順路を飛ばしたカップルが鐘へと急いだり
餌やりショーやイルカーショーの案内アナウンスなど、一気に活気づいて
先ほどの甘い時間は夢のように感じる。
あんなところでキスしちゃったんだ・・。


私達は館長自慢のレストラン
「ドルフィン・ドリィーム」に着いた。
ちょっとお弁当も考えたんだけど、いつも私のご飯食べてもらってるから
休日くらい外食したいのじゃないかと思って用意はしてこなかった。

まだ開館したばかりだから、並んでもいなくてすんなり入れる。

家族連れの人や若い人、誰でも選べるように
洋食、和食、中華や甘味などなんでも揃っているみたい。

それぞれに専門のシェフがいるって・・ここの水族館すごい!

「何食べようか?」
「え〜〜と・・・」

お互いメニューを開いているけど、こう真正面で向き合うと
さっきの記憶が何回も蘇ってくる!
わ、私さっき自分からキス、しちゃったよね・・。
叫びそうなくらい恥ずかしい・・。

「ゴホン・・じゃあ、僕はこの刺身定食にしようかな」

「え!?水族館にお刺身定食があるの!?」
「これも目玉みたい。テレビでやってたよ。はは、僕みたいな人がやっぱりいるんだね。」
へ、へぇ〜。すごい・・。
まさか、さっき泳いでいた魚じゃないよね??
「ここに○○港直送って書いてあるよ」
心を読まれてしまった・・。


「胡蝶は?」
「う、うーん。"ペンギンオムライス"確かに美味しそう。サラダもついてるし・・でもこの"イカさんパスタとエビさんドリアセット"も美味しそう!!う〜ん・・う〜ん・・」
「僕がどちらか頼もうか?そしたら両方食べられるよ?」
「ぶるぶるぶるぶる!!そんな、大丈夫!!雪男は刺身定食を食べて!!」

うぅ、みっともないところを見せちゃってます・・。
私、優柔不断なんだなぁ・・。
はぅっ!"サンゴ礁いちごパフェ"!!
「それも頼もうね」
「こ、声に出てた・・??」







結局私はペンギンオムライスを頼むことにした。
二人で先に運ばれてきたセットのジュースに手をつける。
あ、結構喉が乾いていたんだ。オレンジジュース美味しい。

「胡蝶、変な意味に捉えないでね」

「はい」

「食べることが好きになったみたいで、よかった」

「く、食い意地・・」
確かに食い意地が最近強いかも・・。

「違うって」
雪男がクスリと笑う。

「再会する前までは、食べることが嫌いだったみたいだし、興味ないっていうか
そんなところがあったよね」

あ・・
そう、食事が、あんまり好きじゃなかった。
みんな集まって顔を向け合って食べる時間も。
食べるっていうことが面倒にすら感じて・・。
冷めた料理でも全然気にならないし
一人で食べるなら、修行や任務の合間に固形スティックのようなもので十分だった。
もちろん、それなりに料理も覚えたし
子どもの頃よりは美味しいと思えることも増えてはいたけど・・。

でも今は
「雪男や燐や、みんなと食べるととっても美味しいんだもん!」

燐の温かいお料理やお弁当、学食やスナック菓子でもみんなで楽しく食べると本当に美味しい。
雪男と食べると本当に本当に美味しい!そう思えることができて

今まで感じなかった「美味しいもの」が世の中にはたくさんあるんだって気付いたの。

「うん、僕も胡蝶と食べるととても美味しいよ」
「へへ・・」
変なニヤケ方しちゃった。

もう周りにも人がいっぱいいるし、あまり変な顔できない。
一応さっきまで任務で来ていた祓魔師なのだし!
職員さんに見られて祓魔師のイメージが悪くなると困る!
クールに!!
うん、もっと変な顔になってる気がする・・。







「刺身定食とペンギンオムライスお持ちいたしました」
パフェは食事のあとに頼んだのでまずはオムライス!
オムライス、ペンギンさんの旗が立ってる!
ペンギンといっても勿論ペンギンのお肉なわけじゃなく
オムライスに添えられたうずらの卵がペンギンさんになっていて
売りはシェフ自慢のデミグラスソース!
洋食屋さんをやっていたころから20年の歴史があるらしい。
ふわふわ卵にかかったソースの香りが食欲を多いにそそります。
サラダも付け合せとは思えない豪華さだ。
食べきれるかな・・。

「いただきます」「いただきます」

うわぁ〜美味しい〜
こんなオムライス食べたことない!!

「うん、美味しい」
「雪男、オムライスもすっごく美味しい!食べてみる!?」
「あ、うん。じゃあ、ありがとう」

あ、
お刺身のお箸じゃ・・
ス、スプーンも渡すべきだよね・・。
嫌だったら、つ、使わないでもいられるし・・。
私はスプーンがのったままのお皿を向けた。
雪男は普通に私のスプーンでオムライスを口に入れる。

「本当だ。美味しいね。デミグラスソースが美味しい
胡蝶もこれ好きでしょう。食べてみな」

お箸・・渡された。

「あっありがとう・・それでは・・いただきます・・・うん!美味しい!」

うん、お刺身美味しい
美味しいけど、お箸使っちゃった。い、いやじゃなかったかな。
なんだか距離がすっごく縮まった気がする・・。
えへ・・。






「サンゴ礁いちごパフェでございます」
「うわぁ〜すごく豪華!」
アイスだけでも三種類あってトッピングもサンゴっぽいチョコやお魚のクッキーが
賑やかで素敵!

「美味しい?」
「うん!雪男もどうぞ」

さすがに、"あ〜ん"はまだハードルが高いし
一応さっきまで任務で・・略!

「うん。さっぱりしてるね、ここ美味しい」
「え?どこどこ」
「いちごのソースかな?ほら」

雪男の差し出すスプーンにはソースとフレークが混ざったアイスがのってる・・。
つまり・・。

「・・・」
「?ほら」

ぱく・・。
あ、笑ってる・・。絶対変な顔になってるんだ。
もう〜!!!反則だよぉ〜!!!







「お会計、2625円になります」
「じゃ、これから・・「あ、待って私も」
私の手を制止する雪男。
「いいから。ご馳走させて」
こんなところで「いやいや私が・・」って騒いだら、雪男にいやな思いさせちゃう・・。
お会計も並んできてるし・・。

「じゃあ・・ごちそうさまです」
「うん」

店の外はもう行列が出来ていた。
あんなに美味しいご飯が食べられるなら目当てでくる人もいそう。

「あの、本当にごちそうさまでした。何かお礼・・」
「いいんだよ。気にしないで、僕が誘ったんだから」
「じゃ、じゃあ次は私が誘うね!」
「ありがとう」

周りは腕を組んだカップルや赤ちゃんを連れた家族連れ。
おばあちゃんの車椅子を押しながら一生懸命話す子ども達。 
色とりどりの魚。青い水槽。
すごくいい景色。
お腹もいっぱいで、なんだかいい気持ち・・


「楽しい?」
「うん!とっても楽しい!」

少し歩いたところにはサメの大きな口をモチーフにした入り口がある。
みんな紙袋や可愛いぬいぐるみを嬉しそうに持っている。
え〜・・かめさんのぬいぐるみなんてあるの!?
可愛い・・。

「お土産屋さんだね。行ってみようか」
お土産屋さん・・?


「おいで」
「はい!」
雪男の手を握りしめてサメのお口のお土産屋さんに私達は入った。
 

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