青の祓魔師(雪男・短い夢)

□Halloween
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今日はハロウィン
昨日の日曜日には
燐と一緒にたくさんお菓子を作って、学校でもみんなに配りました。

かぼちゃのクッキーや、お化けのチョコレートは
綺麗にラッピングしたのでとっても喜んでくれました。
フェレス卿にも配ったし、シュラさんにはお酒に合うように、粉チーズやセサミを使ったパイ菓子をあげました。

それで、大切な大切なあの人には
今日、塾が終わってからゆっくりお茶と一緒に・・・って思ってたのに

「うわ〜〜ん!!もう、もう終わっちゃう〜〜〜!!!」

急な任務に駆り出され、時刻は今日の終わりを告げそう!!
ハロウインに祓魔なんて、もうシャレにならないよ〜!
繁華街に出没した、魍魎をささっと片付けるだけで済んだけど〜っ。

こんな風になるんだったら
勿体付けないで、朝に渡しておけばよかった〜!!

も、もしかしたら、もう眠ってるかも・・・
明日も学校だもんね!

ハロウインってそんなに大事なイベント?随分気合入ってるのね・・・。って神木さんに言われちゃったけど
なんというか・・・。
好きな人に
お菓子を作ってあげることができるイベントが嬉しかったのです。

雪男が欲しい(トリック・オア・トリート)って言ってくれなきゃいけないのだけど・・・。
い、言われなくてもあげたいのです。


「た、ただいま〜・・・」

はぁ・・はぁ・・小声で寮の玄関を開ける。

階段を上がっていると、パタパタと上からも足音が・・・。


「胡蝶、おかえり」
「あ、雪男・・・ただいま・・・」

起きてた。起きてた・・。

「はぁ〜〜よかった・・起きてた・・・」
「お疲れ様、お風呂入っておいで。ご飯は?」

本当はドロドロなんだけど、とりあえず、お菓子だけでも先に渡さないと
雪男
もう眠たいよね・・・。



「お風呂はあとで・・・あの雪男あの・・・」



私の鞄を持って歩く雪男が振り返る。

「どうしたの?」

「お茶・・お茶を、持ってくるから・・私の部屋で・・」


仕事から息を切らせて帰ってきて
お風呂にも入らず、お茶を淹れるなんて変だよね。

だって、厨房の冷蔵庫にパンプキンケーキが入ってるんだもん。
雪男のために作ったケーキが・・・。


「も、もう寝る?」


廊下が薄暗くて、見えるけど、雪男の顔が感情まで読めない。


「あの・・」

「寝ないよ」



長い腕が伸びてきて抱き寄せられる。
心臓が泡立つ。



「帰ってくるの待ってたんだから、そんなに早く寝かせないでよ」

大きな胸は温かく、私の身体を包み込んでくれる。
上を向いたら
いつもの優しい笑顔。


「あ・・わ・・私・汚い・・よ・・」

「気にならないけど。じゃ、部屋に入っていい?兄さん寝てるけど音をたててもいけないし、さ」

汗ばんでるはずの私の額に雪男は頬を寄せる。
冷たくて心地よい・・・。

「うん・・」
私は頭がぽ〜っとしながら部屋の鍵を開ける。


ガチャ・・


「おじゃまします」
「ど、どうぞ」


私は祓魔師の制服は片付けたけど
塾から急いで行ったので、なかは学校の制服のままだ。

「お風呂に入ってきなよ。お茶は僕が用意しておくよ」

う・・心苦しいけど、このまま汗だくなのも恥ずかしい。
お風呂から上がってくる時に冷蔵庫から回収してくれば、いいかな。

「じゃ、じゃあ!!すぐにあがってきます!」

「ゆっくりどうぞ。ここにお茶運んでおくね」

私の部屋は、二人用を一人で使っているので
半分はテーブルとチェアの二脚置いてくつろぎスペースとして使っている。


「じゃ、じゃあいってきます!」
「はい、どうぞ」


私は急いで、お風呂に入って髪が乱れない程度に乾かした。
冷蔵庫には
「あけちゃダメ!」という張り紙をしてあるので、誰も開けていないはず。
(燐は事情を知っているし・・・)
このパンプキンケーキは、数日置くとしっとりして美味しいって書いてあったんだ。
日持ちもするし、形だけでも見てもらえれば・・・・。
頑張って可愛く、飾り付けしたんだもん。
足早にケーキを持って部屋に向かう。




よ、よし!笑顔で笑顔で!
実は頭には、シュラさんから頂いた、うさぎの耳を付けてみたのだ。
雪男驚くかな!!!


ガチャ!!!


「ゆ、雪男!トリック・オア・トリート!」


お茶を入れた雪男が目を丸くして見ている。
驚かすつもりだったし!今日は、これで成功!!


「雪男あの、トリック・オア・トリート!」


雪男の目の前にパンプキンケーキを差し出す。


「・・・くすっ・・・」


「ん?あれ?あ、私が言ったら、おかしいんだね・・・」



雪男はクスクス笑いながら、私の手からケーキを受け取る。

「ありがとう、嬉しいよ。
胡蝶になら悪戯されたい気もするけど、はい」

雪男は私の手に
可愛くラッピングされた包みを置いた。

「これ・・・」
「僕からのだよ。既製品で申し訳ないけど」
「ありがとう!」
うわぁ〜嬉しい!


イスは2つすぐ隣に並べてあったので、二人で座る。

「これ、今日のために買ったの」
可愛いジャック・オ・ランタン型のロウソクに火を灯す。
「綺麗だね」
「うん!」



ケーキと一緒にもちろんお皿とフォークも用意してきた。
「夜じゃ、ちょっと重いかも・・・」
「全然平気だよ。食べるのがもったいないけど、いただきます」
ケーキの上には幽霊やかぼちゃお化けの形のチョコを載せたりアラザンで飾り付けしたんだ。
雪男からのお菓子は、ラッピングを開くとキラキラしたチョコや飴が!
可愛い〜!
「うん、とっても美味しいよ」


「よかった!このチョコも美味しい。ラム酒とチェリーが合わさっ・・・あ・・・」



話している途中だったのに、




雪男の唇が、甘い・・・。




「本当だ・・お酒の味がする・・・」




雪男はそう言って、また・・・。



「んっ・・・」



私は、まだ、慣れなくて
恥ずかしくて、心臓は苦しくて
なのに雪男は私の頭を撫でて


「うさぎさん、可愛いね」
って。


嬉しいのだけど、いつもこうやって雪男にリードされてばかりだし、悔しい気持ちになった。



「ん?どうしたの?」



「トリック・オア・トリート!」
私は唐突に言い放つ。


「ん・・もうお菓子はない・・ね」
雪男が困ったように笑う。


「トリック・オア・トリート!」
それでも私はまた繰り返した。




「じゃあ、僕に悪戯しますか?」



「あ、いえ・・」
あ、そんなにっこりハッキリ言われたら・・あうあう・・・。



「しないの?」
「し、しますっ。も、もうっ雪男は恥ずかしくないのっ?」
精一杯、私は、雪男の手をとって握った。
本当は雪男が驚くようなこと、何かしようと思ったのに。




「・・・まぁ、恥ずかしいと言えば恥ずかしいですが
僕が恥ずかしがっていると、何も進展しませんし・・・」

雪男は
私の手をぎゅっと握り返してくれた。

「まぁ、恥ずかしさより、したいという気持ちのほうが強いからかな?」

「う〜〜っ!もういいっそんな真面目に分析されたら恥ずかしいですっ」

「そう?」

座ったままで抱き締められる。




「じゃあ、今度から胡蝶からももっとしてくれたら嬉しいな」




「・・・」



私は目を閉じて
雪男に口付ける。




「胡蝶・・・トリック・オア・トリート・・」



「・・・私のお菓子も、もうないです・・・」




「じゃあ、お仕置きだね・・・」




「悪戯じゃなくて??・・・
もう・・・・」




少し雪男の肩に爪をたててしまう。




「・・・ハッピーハロウィン・・・」





お部屋には甘いお菓子の香り
ロウソクの灯りが二人を包んで・・・。




次の日、二人が寝坊した理由は、二人だけしか知りません・・・。

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