雪男・短い夢2

□ただいま
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夜の冷たい風が首元を通り抜け、それを遮らせるように制服の襟元をクイと立たせる。

「はぁっ・・・」

重たいスーツケースを引きずり、また重くなったブーツの足を止めた。

今回はとても長い任務だった。
そのために、寮の玄関の鍵はいつもより奥深くにしまいこんで出掛けたのだ。


「ん?・・・あれ?・・・あれ・・・」


制服の内の隠しポケットには入っていなく
少し焦る。


「あれ・・・あれ・・・もう、どうして・・・」


ずっと、任務を終えてからここへ帰ってくるまで
早く早く逢いたいと
早く早く逢いたいと思って急いできたのに!!!!どうして!!!!
ガチャガチャと焦る気持ちでショルダーバッグの中も漁る。


もしかして、なくしてしまった??どうしようとスーツケースを開ける勢いで
横に倒すと


ガチャ・・・と重たい寮の玄関の扉が開いた。


ふわりと、中の暖かい空気とともに


「胡蝶・・・!!」


大好きな人の声と顔が視界に飛び込んできた。


「ゆ、雪男ぉ・・・!!!」


「遅いから心配して迎えに行こうとしたら、どうして・・・」


重たかったはずのブーツの足が、何故かふわりと舞った。
そして雪男の胸の中へ飛び込んでいた。

雪男は少しよろけながらも、胡蝶をしっかりと抱きとめる。


そして、ゆっくり頭を撫でた。


「もう・・・チャイムを鳴らせばいいのに・・・」

「あ・・・・」


そう言われて、恥ずかしくなる胡蝶の頬に軽くキスをして
倒れたスーツケースを片手で持ち上げる。


「ごめんなさい」


「謝ることないよ。僕もなんとなくわかるよ、逢いたい気持ちで焦ってしまうんだよね」


「うん・・・」


冷たい風には玄関の扉で別れを告げ
ふんわりとした暖かい明かりが雪男の顔を照らしている。


「隠しポケットをもう一度探してごらんよ」


「え・・・でも・・・」


ないと言う前に一応探してみると、何故か鍵はあった。


「え〜〜ど、どうして・・・・」


「そういうもんだよ」


そう言って微笑んだ雪男は胡蝶を抱きしめた。


「・・・おかえり、僕もずっと逢いたかったよ・・・・」


「うん・・・ただいま・・・・」


そう言って胡蝶も夢にも見た
暖かい愛しい人をぎゅっと抱き締めた。





終わり





お久しぶりです、皆様。
とりあえず長編を書き終えることを目標に頑張りたいと思います!!

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