Long

□わざとじゃないから質が悪い
1ページ/2ページ




いつも通り、へたれアルヴィン降臨中。





*****************






「あー、マジで降ってきたな」







窓から外を見ると、先ほどの晴れ間はどこに行ったのやらまるで洪水のように雨が降っている。
外に出ずに、屋内でいて正解ー、と思ったがそういえばジュード君が買い出しに行ったっけ・・・・とちょっと心配になる。
俺たちミラ様御一行は、この街に着いてのんびりと過ごしていたところである。
たまにはゆっくりしようか、と精霊の主さまの一言で、この街に滞在し、今日で二日目だ。


「ジュード君たち、これは濡れてんな・・・」


災難だなー、昼頃に部屋を買い出しに出て行った少年を思い浮かべる。
アルフレド・ヴィント・スヴェント、通称アルヴィン。
その仲間の優等生に絶賛片思い中である。
この気持ちを失くそうとか、一時期考えたこともあったが、すんなり受け入れた方がしっくりとし、最近になって自覚した恋心は現在進行形で膨らんでいる真っ最中だ。
よくもまあこんな純粋な気持ちが残っていたな、と我ながら感心するほどには成長している。
ジュードの幼馴染みから助言(?)をもらい、自分なりにストレートな告白を天然で集中回避されたことは記憶に新しいが、ちょっとへこんでいるだけだ。
そう、ちょっとへこんだだけだ。
断じて、今まで以上に抱き着いたりしてアピールしているとか、好きだとスキンシップを過多にしているなんてことはない。
銃の手入れをしながら、ジュードとの今後の関係をどうしようかと思いあぐねているとがたんと部屋の扉の開く音がした。
この宿屋では、ジュードと俺が同室なので、十中八九ジュードであろう。
雨宿りしているかもな、という選択肢はこれで消えた。


「ずいぶん濡れたな・・・・」


「あはは・・・・、ありがとアルヴィン」


入ってきたジュードは予想通りずぶ濡れで、服からもしずくがぽたぽたと落ちている状態だ。
立ち上がって、抱えていた荷物を取り上げた。


「いいって。ほらタオル」


「ありがと・・・・。でもずいぶん濡れちゃったな・・・・」


そう言って、いつも着ている黒の上着を脱いで、乾くかな?とこちらを見上げる。
お願い、やめてくれ。
上目づかい、可愛いから。


「それなら干せば大丈夫だろ。ほら、シャワーでも浴びてこいよ」


このままだと風邪ひくぞ、ともっともなことを言いながら早々に俺はジュードを浴室へと押しやった。
でも服・・・と少し抵抗を見せながらも俺の方が正しいと判断したのか、ぱたんと浴室の扉のしまる音がした。


「はぁ・・・・」


ジュードが完全にシャワーを浴びていることを音で確認して、盛大なため息をつく。
自分が男に、ましてや少年に惚れているという抵抗はもう乗り越えたんだが、ジュードのあの天然さにはどうしても慣れない。
いやさー、同性だから仕方ないぜ?
気にすることなどなにもない。まったく。そのはずなんだ。
たとえ濡れたシャツのせいでジュードの白い肌や胸の飾りが透けていたとしてもな!
先ほどジュードを浴室へ追いやったのも風邪をひくからという心配もあったのはもちろん事実だ。
しかし、こう惚れている相手の無防備な身体を見てイケナイ気分になってしまった自分が憎い。
ラッキースケベというのがこの場合正しいのかどうか分からないが、自分の初心さにどうしようもなく泣きたくなる。
し・か・も、相手はあの天然鈍感優等生ということを忘れてはいけない。
自分と二人きりの時、その天然さを十二分に発揮してくれるのだから余計に質が悪いといえる。
このままだと相手に受け入れられる以前にこちらの理性が吹っ飛んでしまうことは目に見えていると嫌な自信さえあるのだ。


「あー、やめだやめ!」


このままジュードのことを考えていると邪な方向ばかりに向いてしまうのでとにかく心を鎮めようと銃の手入れを再開した。






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ