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□恋心はなれない
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恋心はなれない


宿屋に入って、女の人と話しているアルヴィンを見てあれが正しいのだと思ってしまった自分が嫌だった。
僕に気が付いてアルヴィンは僕の方にやってくる。

「ここは、始まりと別れの道なんだってな。」

その言葉に焦りを感じた。
だって、アルヴィンの言おうとしていることが何となく分かったから。

「あれ、次の依頼主。」

目の前が一瞬暗くなってしまった。



2、3言葉を交わして屋敷へ戻ってきた。
ミラの足は父さんならきっと治せるだろう。
明日、行くところも決まった。
エリーゼとティポもこの屋敷なら上手くやっていけるだろう。
アルヴィンは・・・・・。

「行っちゃうんだ・・・。」

声に出してみると今さらながら悲しくなってきた。

ジュードは密かにアルヴィンに好意を寄せていた。
おちゃらけているようで意外と人を見ているあの大人に。
カッコイイと思ってる。
その人がたとえ、女の人が好きだとしても。
以前にキジル海幕で見た女の人もおそらくアルヴィンの知り合いだろう。

そう思ったら、自分はなんだったんだろう?

こんなに呆気なく、アルヴィンは行ってしまう。
でも、仕方ないよね。傭兵なんだから。
だから・・・・。

「っ・・・・、」

水滴が落ちる。止めようと止めようとしてもぽろぽろ落ちてくる。
止まらない、止められない。
悲しい。離れていってしまう。
「行かないで」、そう言いたかった。

女の人が好きでもいいから、僕も近くで彼を見ていたかった。
想いなんて伝わんなくてもいいから、一緒にいたかった。






でも、それすらもかなわない。
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