TOX
□今酔い
1ページ/9ページ
今酔い
街に着いて宿屋をとり、自由行動となった。
ジュードは買い出しの当番なので一人、店を回っていた。
仲間から手伝おうか、と同伴を申し出られたけれども断った。
なぜならジュードは悩んでいたからだ。
悩みの種は一か月ほど前にできた恋人のアルヴィンについて。
大人で同性、女好き。
それでも好きな気持ちを抑えられなかった。
ダメ元で告白すると、あっさり受け入れられて、晴れて恋人という関係になった。
相談していたレイアには祝福され、エリーゼ、ティポ、ミラ、ローエンも気持ち悪がることなく受け入れてくれた。
なのに、
「なんにも、変わってない・・・
・・・・。」
ジュードは買い出し先で商品を物色しながら一人つぶやいた。
そう、恋人という関係になってもアルヴィンは変わらなかったのだ。
正確にはジュードに手を出してこない、というのが正しい。
魔物に勝利したとき、肩を組まれるくらいでそれ以上のスキンシップは皆無だ。
自由行動となった時でもすぐにふらふらとどこかへ行く。
夜、戻ってくるのも遅い。
アルヴィンの自由時間を束縛したいだなんて思わない。
けれど、恋人同士なのだ。
ジュードもキスしたい、とかそれ以上も・・・・と年頃の男の子らしい感情もある。
「やっぱり、同情なのかな・・・・?」
それだったら、OKしてくれないよねと思いながらも頭の中では悪い方向へ向かっていく。
アルヴィンは女の人、好きだし。僕は子供で、男だし。
子供相手に振るのは大人げないと仕方なく付き合ってくれてるのかな?
それだったら、・・・・振ってくれた方がいいのに・・・・。
「それ、今日入ってきた商品なんですよ。」
ジュードはいきなり店員に話しかけられて、ビックリした。
そうだ、僕、買い出しに来てたんだった。
店員はそんなジュードにおかまいなしに話し続ける。
「お酒が好きな人に人気の果実酒なんですよ。今、ちょうどいい時期なんです。料理の香りづけにも使えますし。」
果実酒。大人が飲めるお酒。
アルヴィン、喜んでくれるかな?今日は、みんなでご飯食べようって言ったし・・・・。
渡せるよね・・・・。
「じゃあ、一本お願いします。」
ジュードはそれをと指さし、自分のお金で購入した。
店を出て、ジュードは買い出しを終了した。
大きな街でお店がいっぱいあって迷ってしまった。
辺りは薄暗くなってしまっている。
「早く、帰らなきゃ。」
ジュードは、自然と早足になる。
アップルグミなどの消耗品、怪我のための包帯、そしてアルヴィンへの果実酒。
荷物は重いけれど、ジュードの足取りは軽かった。
早く渡したい。喜んでくれたらいい。
そう思いながら宿屋への道を急いだ。
近道の階段をのぼって橋をわたっていると、遠くの店の裏で男女の陰を見た。
修羅場・・・というものかなと興味本位でよく見てみると男の方はアルヴィンだった。
「ある・・・・」
声をかけようとすると、女の人がアルヴィンに抱きついた。
「っ・・・・!!!!」
アルヴィンはそのままじっとしている。
相手の女の人もそのままで。
なんで・・・・?なんで、抱き合っているの・・・・・?
やっぱり女の人がいいの?
ジュードは混乱して、そのまま駆け足で立ち去った。
僕との関係はやっぱり同情だったのかな・・・・?
でも、ショックなのはあの光景が普通だと思ってしまった自分がいたことだった。